この個展では、ロルフベンツの家具にインスピレーションを受けて製作した新作「Bone Flower meets Rolf Benz」シリーズを発表。現代アートを生活に取り入れたいと考えているなら、是非ともこのイベントに足を運んでもらいたい。
一般的に現代アートを目にする時は、往々にして白くて広い空間に展示台があり、その上にうやうやしく作品が置かれている場合がほとんどだ。作品を美しく見せる方法ではあるが、本来のアートというのは、非日常的なものではなく、非日常的なものではなく、生活空間に飾って楽しむもの。もっと生活に密接な関係であるべきだと考える。だから奈良祐希は、ロルフベンツからの個展のオファーに賛同した。
左奥は線的な「形態」、真ん中は裂け目に纏わる「物語」、右奥は禅のまる・さんかく・しかくの「哲学」を参照にしている
「これまでのアートの展示方法は、生活と分離していました。前例主義の均質な空間の中では、暮らしの中でどのように見えるのか想像はできません。実際に僕の作品を購入してくれた方々から、”どんな家具と合わせればいいのでしょうか“と相談されたこともあります。従来の展示方法だと、作品は展示してもインテリアとの相性は提示してくれない。
しかし本来は、アートと生活は密着しているものですから、家具やインテリアも含めて考えれば、アートをより身近に感じてもらえるのではないかと思いました。その点、ロルフベンツ東京では、様々な生活シーンに合わせて家具をコーディネートしています。ここにアートを組み合わせることは、非常に面白い企画になりそうだと感じたのです」
家具とアートをつなぎ合わせるために、奈良はまずはロルフベンツというブランドを徹底的に学んだ。
「ブラント哲学や歴史を学び、家具や製造工場も見せてもらいました。シンプルな形の中に独自の美学を見出す哲学は素晴らしいですし、クラフツマンシップや手仕事を尊ぶところにも共感できました。
実は藝大に入って最初の授業は家具のデザインで、家具の中で最も人間に近い椅子が課題でした。学生時代にデザインだけでなく、作り手の考え方なども勉強しました。だからロルフベンツの製品を見た時に、なぜこういったデザインが生まれたのかを深く理解できた。これは今回の作品を作る上で、大きく役立ちましたね」
「ロルフベンツ8710」の白い大理石天板とのコントラストを出すために、初めてカラフルな作品を製作。白い天板の上に美しい虹色の陰影が見える。コラボレーションが新しい表現を導く