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2020.10.29 20:00

「アートのある暮らし」の理想が見える。ロルフベンツで奈良祐希の個展

反射した様子も含めて、作品となる。

反射した様子も含めて、作品となる。

ドイツを代表する高級家具メーカー「ロルフベンツ」の旗艦店「ロルフベンツ東京」では、11月3日まで新進気鋭の陶芸家/建築家、奈良祐希の個展「Synergism」を開催している。

この個展では、ロルフベンツの家具にインスピレーションを受けて製作した新作「Bone Flower meets Rolf Benz」シリーズを発表。現代アートを生活に取り入れたいと考えているなら、是非ともこのイベントに足を運んでもらいたい。

一般的に現代アートを目にする時は、往々にして白くて広い空間に展示台があり、その上にうやうやしく作品が置かれている場合がほとんどだ。作品を美しく見せる方法ではあるが、本来のアートというのは、非日常的なものではなく、非日常的なものではなく、生活空間に飾って楽しむもの。もっと生活に密接な関係であるべきだと考える。だから奈良祐希は、ロルフベンツからの個展のオファーに賛同した。


左奥は線的な「形態」、真ん中は裂け目に纏わる「物語」、右奥は禅のまる・さんかく・しかくの「哲学」を参照にしている

「これまでのアートの展示方法は、生活と分離していました。前例主義の均質な空間の中では、暮らしの中でどのように見えるのか想像はできません。実際に僕の作品を購入してくれた方々から、”どんな家具と合わせればいいのでしょうか“と相談されたこともあります。従来の展示方法だと、作品は展示してもインテリアとの相性は提示してくれない。

しかし本来は、アートと生活は密着しているものですから、家具やインテリアも含めて考えれば、アートをより身近に感じてもらえるのではないかと思いました。その点、ロルフベンツ東京では、様々な生活シーンに合わせて家具をコーディネートしています。ここにアートを組み合わせることは、非常に面白い企画になりそうだと感じたのです」

家具とアートをつなぎ合わせるために、奈良はまずはロルフベンツというブランドを徹底的に学んだ。

「ブラント哲学や歴史を学び、家具や製造工場も見せてもらいました。シンプルな形の中に独自の美学を見出す哲学は素晴らしいですし、クラフツマンシップや手仕事を尊ぶところにも共感できました。

実は藝大に入って最初の授業は家具のデザインで、家具の中で最も人間に近い椅子が課題でした。学生時代にデザインだけでなく、作り手の考え方なども勉強しました。だからロルフベンツの製品を見た時に、なぜこういったデザインが生まれたのかを深く理解できた。これは今回の作品を作る上で、大きく役立ちましたね」


「ロルフベンツ8710」の白い大理石天板とのコントラストを出すために、初めてカラフルな作品を製作。白い天板の上に美しい虹色の陰影が見える。コラボレーションが新しい表現を導く
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文=篠田哲生 写真=江藤義典

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