ビジネス

2020.10.28

村松竜が語る「伸びる起業家」の条件 #30UNDER30

GMOペイメントゲートウェイ取締役副社長 村松竜


DXしているかどうか、それがそのまま国力の差となって表れてもいます。たとえば中国は、世界でも類を見ないほど社会全体としてDXが進んでいる。

私たちは創業以来、日本の金融経済のデジタル化をメイン事業としてきましたが、今後もしっかりとその使命を果たしていきたいと考えています。

そしてそのトランスフォームは、何もデジタルに限らない。テクノロジーの進化で、究極的に生産性が向上していけば、「働かなくても生きていける」時代がやってくる。

食うため、生きるための労働から、「幸せに暮らすため」に働く時代がやってきます。「心」の充足感が最重要な要素となったとき、人は何を為すべきなのか。100年後の未来に私自身はいないけれど、次世代、その次の世代のチャレンジのためにこの20年、30年、私たちに何ができるか。それをきちんと見据えていきたいと考えています。

言語を超えた日本の強み


そういう意味では、今回推薦させて頂いた「いちから」の田角陸さんは、まさに次の時代に向けたチャレンジに取り組んでいる一人だと思いました。

VTuber、バーチャルライバー事業という未知の領域を切り拓いて、まったく新しい体験を生み出している。映画「攻殻機動隊」でいうところの「ゴースト」、物理的な身体とは異なる自我が存在している、みたいな。そういう世界観が非常に面白いし、まさに変化の予兆をつかんでいるビジネスだと思うんです。

30 UNDER 30 JAPANの評価基準は「世界に通用する日本の若者」ですが、私自身はJAFCO時代からずっと、日本と世界との壁を目の当たりにしてきました。シリコンバレーで感じたのは、ネイティブスピーカーの圧倒的なアドバンテージです。

母国語がそのまま世界でも通用するってずるいですよね(笑)。そして自国アメリカのマーケットを掌握すればそのまま世界市場の50%を取ることができる。一方、我々は日本の国内市場で勝利しても、そこからまた“世界予選”のはじまり。

スキルレベルは変わらなくても、母国語の違いだけで大きな差がついてしまう。とくにネット産業は言語とセットなので、世界市場に出て行きにくい悔しさがあります。

ただ、そんな実態があってもなお、日本が戦えているのが、自動車やハードウェアといった精密さや品質の高さが問われる領域。それと、アニメをはじめとしたアートの世界です。

表現としての特異性や、文化の違いを超えた芸術性が受け入れられている。言語を超えた「メタ言語」を生み出すことができる業界では、日本は今後も世界でトップを取りに行くことは十分可能だと思っています。


村松 竜◎早大卒業後ジャフコに入社。1999年カード決済処理サービスのペイメント・ワン創業、カードコマースサービスと経営統合しGMOペイメントゲートウェイに社名変更、2005年マザーズ上場(現東証一部)。同年にGMOベンチャーバートナーズ設立。

構成=大矢幸世

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