岡部:仮に消毒作業をしたとしても、どなたかがマスク無しでくしゃみや咳をした瞬間、もしくは飛沫のついた手でどこかを触った瞬間に、またもや感染リスクは発生してしまいます。ですので、消毒作業を行なった後に「証明書」の発行などを行ったとしても、あまり意味がないと考えています。
坂本:その通りですね。「消毒をしました」という作業終了書は出せるかもしれませんが、それ以後にその場所で感染しない保証など誰にもできません。感染を防ぐには、無菌化を目指すことよりも、手洗いの方が重要なのです。
新型コロナ対策 民間企業ができることは?
岡部:今回の新型コロナウイルス感染症の蔓延は長期化が予想されています。民間企業が取り組んでいくべきことはありますか?
坂本:まず換気については指摘することができると思います。劇場やショッピングセンターなどの施設内で、十分な換気がなされていることを利用者に分かりやすく伝えることは、今後ますます重要となってくるでしょう。
感染予防のために十分な換気の基準を満たしているかを、指標などを用いて利用者にわかりやすく示す工夫ができるとよいかもしれません。
また、必要以上の対策、または効果が不確実な対策をやめることも大事です。これらは消費者と企業の双方にとって大きな負担にもなります。例えば、冒頭で話題となった消毒薬の散布などは、人体への毒性もあることですし、効果も不確実です。リスクに見合い、根拠に基づく感染対策が当たり前になっていくことに期待したいと思います。
太刀川:現状では残念ながら、不安を煽るような形で消毒作業を売り込む業者の存在や、適切ではない消毒方法を採用している業者も多いと感じています。新型コロナウイルスの感染経路や消毒方法についての正しい知識を、より多くのユーザーに知っていただけるように、企業も努力していく必要がありますね。
岡部:感染管理のご専門の方と直接お話させて頂く、大変有意義な時間となりました。お忙しい中、本当にありがとうございました。
聖路加国際病院にて。左より、岡部 美楠子氏・坂本 史衣氏・太刀川 英輔氏
聖路加国際病院「QIセンター」感染管理マネジャーの坂本史衣氏へのインタビュー連載は、今回が最終回。今後もPANDAIDとして、感染予防のための正しい知識とコロナ禍でも豊かに暮らす方法を紹介していきたい。
※記事内容は10月16日時点の情報に基づく。
連載:パンデミックから命をまもるために
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