彼女が宇宙に行けなかった驚きの理由 STEM分野の根深いジェンダーギャップ

STEM分野でのジェンダーバイアスは根深い(Photo by Unsplash)

ジェンダーバイアスの存在は、グーグルを使った単純な操作で例証できます。グーグル翻訳で、「彼女は科学者です。彼は看護師です」と英語で入力してみてください。

その文章を、ジョージア語やトルコ語のような、代名詞に性別がない言語に自動翻訳します。

翻訳後の文章を、再度、翻訳して英語に戻すと、自動翻訳では、「彼は科学者です。彼女は看護婦です」に変わってしまうのです。

まさに、悪魔は細部に宿るというように、アルゴリズムにもジェンダーバイアスが潜んでいるのです。

2015年の「ユネスコ・サイエンスレポート:2030年に向けて(UNESCO Science Report: Towards 2030)」によると、STEM(科学、技術、工学、数学)分野では、世界の学士号や修士号取得者の53%を今や女性が占めているにも関わらず、研究者の中で女性が占める割合はわずか30%。女性は男性に比べてはるかに高い割合で、この分野を離れてしまうのです。社会的投資や個人の努力が無駄になってしまっているだけでなく、女性をSTEM分野のキャリアにつなぎとめる上で構造的問題があるということを、この結果は示唆しています。

さらに、生命科学分野では、多くの国で男女の均衡が達成されているのに対して、エンジニアリングやコンピューターサイエンスといった、アルゴリズムと直接関係がある分野では、女性の数は一貫して少ないままです。

職業選択には、社会障壁という構成概念がつきまといます。そして社会障壁をつくりあげているものは、私たちが、自らや子どもたち、そしてお互いに語り続けている物語に他ならないのです。

このような、ポジティブなナラティブ(語り口)の欠如、生来のジェンダーバイアス、女性をSTEM分野のキャリアへと導くパイプラインの構造的欠陥等については、今までも多く語られてきました。しかし、実際には、科学や技術の発展過程における、女性の不在や数の少なさが、このような結果を招いているのではないでしょうか。

こうした不均衡は、これまでも人類の歴史において悪影響を与えてきましたが、アルゴリズムやAI(人工知能)、機械学習が社会的および経済的成果に直接影響を及ぼす時代に向かう今、私たち全てに悪影響を与えることになるかもしれません。

驚きの理由で、宇宙飛行士の彼女は交代させられた


例を示すために、ナラティブの話に戻りましょう。この春、人類の探検の最先端において、STEM分野の女性が直面する日常的な試練を浮き彫りにする、2つの出来事が起こりました。
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文=Shamika Sirimanne, Director of technology and logistics, UNCTAD

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