彼女が宇宙に行けなかった驚きの理由 STEM分野の根深いジェンダーギャップ

STEM分野でのジェンダーバイアスは根深い(Photo by Unsplash)


2019年4月、史上初めてブラックホールの姿が明らかになりました。ブラックホールの撮影には地球サイズの望遠鏡の建設が必要で、これまで不可能なミッションと思われていましたが、既存の望遠鏡のブラックホールのデータをつなぎ合わせるべくアルゴリズムを利用することで、撮影が実現したのです。

マサチューセッツ工科大学のコンピューター科学者、ケイティ・バウマン氏が、この画像化プロセスで重要な役割を果たしました。彼女の話と、画像データのハードドライブを山詰みにした写真がネットで広まると、すぐに彼女は、もう一人の著名なコンピューター科学者、1960年代に人間を月へと送るアポロ計画でプログラミングを行った、マーガレット・ハミルトン氏と比較されるまでになりました。

しかし、ケイティ・バウマン氏自身が、世界中の科学者から成る素晴らしいチームの一員だとはっきり述べたにも関わらず、オンライン上では、彼女の功績はでっち上げだと主張して、彼女の担った役割を軽視しようとする、一部のネットユーザーによる荒らし行為がありました。

ブラックホール撮影画像が公表される1カ月前の、2019年3月には、アメリカ航空宇宙局(NASA)が、予定されていた史上初の女性だけの船外活動を中止する事態に追い込まれました。

理由は、女性宇宙飛行士に合う宇宙服の数が足りないという、滑稽としか言いようがないものでした。これまでの宇宙開発計画者たちは、女性はどのフライトチームでも常にごく少数にすぎないと、決めてかかっていたに違いありません。

その結果、船外活動予定だった女性飛行士の一人が、男性飛行士と交代させられることになりました。

この一部始終は、目に見えないバイアスが引き起こす、女性が遭遇しがちだけれどもほとんど議論されていない経験を、如実にさらけ出しています。世界は、宇宙も含めて、主に男性により男性のために設計、開発され、男性にとっての「当たり前」を中心に回っているようです。

才能を逃さない環境づくりを


では、STEM分野に女性を惹きつけ、つなぎとめるにはどうすればよいでしょうか?さまざまな国があらゆる課題に直面しています。

最近の研究では、一定条件下にある社会において、女性がSTEM分野の専門家というキャリアに興味を引かれなくなるという現象には、複数の複雑な理由があることが示唆されています。

しかし、中でも大きな要因と思われるのは、親の期待や社会規範、情報不足といった環境下で将来の夢が形作られ、その結果、キャリア選択に悪影響を及ぼしてしまうこと、そして、女性の参入や地位向上を妨げる、制度上のバイアスです。
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文=Shamika Sirimanne, Director of technology and logistics, UNCTAD

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