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2020.10.29

「再生材料」でつくられるスマホの未来 アップルやファーウェイ、6社の最新事例

テクノロジー企業もサーキュラー・エコノミーに移行している(Photo by Unsplash)

電子機器の製造においても、環境への影響が少ない供給体制に移行しようと、多くの企業が試みています。世界経済フォーラムのアジェンダからご紹介します。


・テックジャイアントたちは、二酸化炭素の排出量を削減し、限りある素材の、責任ある持続可能な供給を機会としていく方法として、サーキュラー・エコノミーに大きな期待を寄せています。
・廃棄される電子機器の材料には、年間約570億ドルの価値があると考えられていますが、その80%以上は収集されないままです。
・アップルは、iPhoneとその部品を分解するロボット「デイジー」と「デイブ」を開発。iPhoneのタプティック・エンジンにおいて、スマートフォン製造に100%リサイクルされたレアアース(希土類)を使用する業界初の試みを行っています。
・デルは、ヘッドフォンやハードドライブなどの電子機器からレアアース磁石をリサイクルしています。

電子製品は今や、私たちの日々の生活に欠かせないものとなっています。特にパンデミック(世界的大流行)中には、電子製品によって繋がることの必要性がこれまで以上に高まりました。使用済みの古い電子製品には多くの貴重な材料が使われていますが、それらは未使用のまま放置されたり、最悪の場合、インフォーマルセクターや埋め立て地に消えてしまったりすることさえあります。

そこには、大きなチャンスがあります。使用されなくなった電子機器の材料には、年間約570億ドルの価値があると考えられています。引き出しの中に眠っていると推定される携帯電話は、ヨーロッパだけでも1億台。各企業は、デバイスの回収量を増やすための新しい方法、そして、回収材料の質および量を向上させるための新しい技術への投資を行っています。

多くの企業が、採掘された材料に比べ地球への影響が少なく、責任ある、持続可能な材料の供給に機会を見出しています。これらの機会を踏まえ、世界最大級のテクノロジー企業は、材料の使用や再利用の方法を見直し始めています。アップルは、電子機器を「分解」するロボットに投資することで、材料回収の質と量を改善する新しい方法を開拓しようとしており、2030年までのカーボンニュートラルの実現を目指す同社のロードマップにもサーキュラーデザインを取り入れています。一方、ヘルスケア技術事業者のフィリップスは、顧客が使用する製品を実際に所有する必要があるのかについて再検討を始めています。

このようなソリューションは、世界経済フォーラムが国連のE-Waste Coalitionの支援を受け、立ち上げた「電子製品の新しいサーキュラービジョン」の中心となるものです。これにより、大きな成果が得られる可能性があります。電子製品から金を抽出すれば、採掘するよりも二酸化炭素の排出量を80%削減することができます。1000トンの電気・電子機器廃棄物が収集および分類されるごとに、15件の雇用と110件のトレーニングの機会が創出される可能性があります。 世界経済フォーラムの新しい報告書でも、国際貿易を通じてこれらの戦略を実現する方法を探っています。

サーキュラー・エコノミーへの移行に向けたテクノロジー企業6社の取り組みを紹介します。

1. アップル

世界最大のテクノロジー企業のひとつとして、アップルの行動にはテクノロジー分野全体への強い影響力があります。iPhone 11、iPhone 11 Pro、iPhone 11 Pro Maxの発表により、アップルは、タプティック・エンジンに100%リサイクルされたレアアースを使用するという業界初の試みを実現しました。
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文=Kimberley Botwright, Community Lead, Global Trade and Investment SI, World Economic Forum; James Pennington, Lead, Circular Economy & China Partnerships, World Economic Forum

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