なぜ米有権者は3時間も行列しなければならないか

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アメリカ大統領選挙が米国時間11月3日に迫った。再選を狙う共和党指名候補ドナルド・トランプ現大統領か、民主党指名候補ジョー・バイデン前副大統領か、その行方に世界が注目している。

「選挙システムの見直しを」との声が米国内からも出ている現在だが、その仕組みはいかなるものなのか。読売新聞ワシントン支局長の経験もあり、アメリカ政治に詳しい湊和夫氏に改めて解説していただいた。


アメリカの大統領選挙は、4年に一度、行われる。オリンピックの年、あるいは閏年に行われる、と言えば覚えやすいであろうか。この選挙は、まる一年かけて演じられる長期戦である。この長期戦は3つの段階からなる。

1段階目、「プライマリ」と「コーカス」で各州代議員を選出


まず第1段階は、1月から6月にかけ、各州で各党ごとに実施される予備選挙(プライマリ)もしくは党員集会(コーカス)である。ここでは、8月から9月にかけ開催される民主、共和党全国大会に出席する「各州代議員(delegates)」が選出される。

民主、共和各党大統領候補に指名されることを望む政治家たちは、これらの予備選挙もしくは党員集会に立候補して、自分を支持してくれる代議員をなるべく多く獲得することを目指す。予備選挙も党員集会も、その州の各党支部に登録した有権者だけが参加できる行事だが、党員集会は「登録した有権者がいくつかの地域ごとに集会を開いて代議員を選出する」点が異なる。

2段階目、各党全国大会


さて、大統領選の第2段階は、8月から9月にかけて開催される各党の全国大会である。全国大会は、野党(現在、大統領を持っていない政党)の方が本選挙への対策・準備により多くの時間を要するとの配慮から、野党から先に開催されるのが慣例である。

3段階目、両党正副大統領候補による選挙戦


第3段階が、かくして指名された政党の「正副大統領候補」による選挙戦である。両党の正副大統領候補は、専用のジェット機や貸し切り列車で全米各地を遊説する。両党候補によるテレビ討論も3回程度行われる。連日、CMが飛び交う。
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文=湊 和夫 作表=長谷川 寧々 構成=石井 節子

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