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2020.10.26 11:30

スペースXの企業価値は10兆円強、モルガン・スタンレーが試算

イーロン・マスク(Photo by Joe Raedle/Getty Images)

投資銀行のモルガン・スタンレーは10月22日に開示したレポートで、イーロン・マスクのロケット会社「スペースX」の評価額を、7月の520億ドルから2倍近くの1000億ドル(約10兆500億円)以上に引き上げた。同行の最も強気のシナリオでは、スペースXの価値は2000億ドルを超えるという。

「スペースX:主な進展に続く評価シナリオの引き上げ」と題されたこの報告書は、評価額の上方修正の理由として、同社の直近の19億ドルの資金調達ラウンドと、それに続くNASAやペンタゴンなどの政府からの契約の獲得を挙げている。ただし、直近の収益状況や、黒字化を果たしたかどうかなどの重要な財務指標には言及していない。

モルガン・スタンレーは、マスクの宇宙事業を「新興宇宙経済のためのミッション・コントロール」と表現している。スペースXは顧客のために人工衛星などを宇宙に運ぶ「打ち上げ事業」と衛星インターネットの「スターリンク」、そして宇宙旅行の「ポイント・ツー・ポイント・トラベル」の3つのピースを持っている。ただし、これを実現するためには、さらに数千億ドルの投資が必要になるだろう。

衛星インターネットの価値


評価額のアップグレードの最大の要因は、宇宙から世界中にインターネット接続を提供する「衛星コンステレーション」のスターリンクだ。

モルガン・スタンレーは、スペースXの打ち上げ事業を120億ドル、宇宙旅行事業を90億ドルと評価した。さらに、2040年までの世界の衛星インターネットの潜在的加入者数予測を従来の2億3500万人から3億6400万人に引き上げた上で、スターリンクの価値を420億ドルから810億ドルに引き上げた。

ただし、この数に到達するためには、追加のネットワーク構築に約2400億ドルが必要になるとモルガン・スタンレーは述べている。これが、スターリンクが広告通りに機能するかどうかに懐疑的な人が多い理由の一つであり、投資銀行のコーウェンは、9月下旬のリサーチノートで、米国の「帯域幅を重視する」世帯にとってのスターリンクの価値を疑問視していた。

投資家は、スペースXが8月に19億ドルを調達した際に、同社の企業価値を460億ドルとしていた。モルガン・スタンレーの評価額があまりにも高い背景には、イーロン・マスクの宇宙事業を、他の企業と比較することが、ほぼ不可能であることがあげられる。スペースXはテスラのような上場企業ではなく、上場済みの競合他社も存在しない。

さらに、大手金融機関は今後のIPOを視野に入れ、企業を過大評価するインセンティブを持っている。モルガン・スタンレーの報告書には「当行はレポートで取り上げた企業と取引を行っている、また取引を行うことを目指している」との記述がある。
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編集=上田裕資

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