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2020.10.29 16:30

「起こった未来」とは何か。ポストコロナ時代の予兆と獲得すべきシナリオ

経済が混沌とする中で、すでに見えている予兆とは何か

経済が混沌とする中で、すでに見えている予兆とは何か

アキレスと亀という話がある。ゆっくりと進む亀の後を足の早いアキレスが追うが、お互いが進み続けるので永遠に追い越せないというパラドックスだ。追いつくまでの見方にとらわれていたら追い越す議論にならないという、ものを見る視点の相違のことでもある。
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「私たちは、すでに『起こった未来』にいる」と言うのは、アクセンチュアのストラテジスト中村健太郎だ。これは映画の『TENET』よろしく時空の話ではまったくない。明日をも危うい日本企業が持つべき視点のことだ。

起こった未来とは何を指すのか。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生後の現場とこれから先の未来、リーダーに必要な視点がわかってくる。

負けを認めず定義を変えてきた日本


中村は、アクセンチュアのトップストラジストの一人として多様な企業と接してきた。たった数カ月ですべてが様変わりし、変革が迫られる状況の中、レポート「ポストコロナ時代のフューチャービジョン」で企業が取るべき道を聞いた。
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───こちらの資料ではCOVID-19がもたらしたインパクトをマトリクスに(下図参照)していますが、ほとんどの業種で影響を大きく受けたことがわかります。これ以降、変化・改善している業種はありますか。

この図は、2020年1月から5月の間に企業が受けた影響を、縦軸の時価総額最大下落幅と横軸の時価総額回復幅で俯瞰しています。自動車関連企業は市場の回復を受けて工場の操業が上がっていますし、株式市場や油価の回復により、金融・エネルギーセクターも持ち直しているので、これらの業界は悲観しすぎる必要はないとみています。

COVID-19があたえたインパクトの図

日本国内におけるCOVID-19発生後の業種別時価総額の変動(*1:日本国内で新型コロナ症例が発見された1/17から資料作成時(5/29)までの時価総額底値を最大下落幅と定義 *2:左記時価総額底値から資料作成時までの株 価上昇額を回復幅と定義 Source:SPEEDA “国内上場企業データ” よりアクセンチュア作成)

───例えば、最も影響を受けた業界のひとつ、小売業界復活のためにはデジタル化の背景からECという発想に直結しがちですが、対面販売の文化とそのパワーは否めない。復活の鍵は見えない気がします。

市場を定量的に見るとECが拡大していることにすぐ気づきますが、リアルでの物販とECではゲームのルールが全く異なります。

リアル店舗は立地を基軸とした商圏を持ち、その商圏内のお客様が求めるものを丁寧に提供してきました。私の家の近所のスーパーは、大手チェーンにも関わらず「中村さん」とか声をかけてくれて、その日のおすすめを教えてくれます。日本の小売業は、制限された市場の中で求められる商品にサービスという付加価値をつけてお客様に提供してきました。

一方、それがECになった瞬間に物理的な距離が0になり、全国の人が全国のものを買えるようになる。そればかりでなく、EC店舗で売っている商品を簡単に比較できるにようになり、経済用語でいう「完全競争市場」に近い状況になります。その市場で勝つための要素は、品揃え・価格・配送スピードの3つといわれており、いずれも大きな資本投下が必要となります。これはリアル物販とは全く違うルールで構成されている市場であり、多くの小売業者がEC市場で苦戦している要因でもあります。

他方、今後の物販が全てECになってしまうことは考えられません。リアル物販は店舗に立脚した良さがあり、そこをより突き詰めていくというのが、ひとつの方法じゃないかと思っています。

───何か事例は?

例えば、アメリカでは「b8ta(ベータ)」という企業が新商品の使い方を体験させる店舗を展開しています。物を売るのではなく、新しい商品の利用体験に特化したサービスを顧客に提供しています。この事例のように、これまで行われてきた対面販売の中で、リアルならではの価値が提供できる要素に特化した店舗形態が必要になると考えます。
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文=坂元 耕二

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