現在、男子テニス世界ランキング1位のジョコビッチがこの発言をしたのは、全仏オープン4回戦でカレン・ハチャノフにストレート勝ちした後だ。ジョコビッチはこの試合中、サーブを返す際に誤って線審の顔にボールをぶつけていた。
これは通常ならば、テニス中の残念だが特筆すべきでもない出来事として扱われるだろう。しかしジョコビッチは、ニューヨークでその数週間前、線審の喉に不注意からボールをぶつけてしまい全米オープンを失格になったばかりだった。
ジョコビッチの技術に対する意見
全仏オープンでは、同じような結末になる危険性はなかった。これはプレー中に起きたことで、「よくあること」と見なされたからだ。しかしジョコビッチは試合後、この出来事について予想通り質問を受けた。ジョコビッチは、ボールがぶつかった審判の健康状態を心配していると述べ、その後でこうした事故が繰り返されないようにするためのあるアイデアを提案した。それは、線審をなくして代わりに技術を使うことだ。
ジョコビッチのような注目を浴びる選手は、主要大会ではショーコートでプレーするのが定番だ。しかし、ジョコビッチが全米オープンで2つの主要コート以外のコートで試合していたら、ボールを審判にぶつけた確率は格段に少なかったはずだ。全米オープンでは、主要コート以外は社会的距離を保つ措置として、ライン判定を自動で行うシステム「ホークアイ・ライブ」を用いていたからだ。
これと同じ技術は、全てのライン判定が自動化されたこのケース以外にも、現在では一般的となったチャレンジ制度(選手が審判の判定に異議を唱えることができる制度)に活用されている。
この技術を最大限活用することがなぜできないのか、とジョコビッチが疑問を呈したのもこのためだ。
ジョコビッチは「このスポーツの伝統や文化には敬意を表するが、線審も含め試合中にコート上にいる人に関しては、これほど技術的に進んだ時代に、シンシナティとニューヨークの大会で活用されたものが世界の全ての大会で活用されない理由が本当に分からない」と発言した。
さらに「技術は現在、非常に進化している。線審をコートに置き続ける理由は全くない。これが私の意見だ」と続け、「もちろん、技術が高価なことは理解している。これは経済的な問題で、まだ明確には分からないことだ。しかし、私は全てがこの方向に向かっているように感じていて、遅かれ早かれ線審を維持する理由がなくなる気がする」と補足した。