少し話が逸れたが、そのFOXテレビもトランプのおかげで視聴率は高い。調査会社ニールセンによれば、FOXニュースはニュース専門局ではここ20年にわたってトップを走っており、平均視聴者数は400万人を優に超える。CNNの倍以上だ。2019年に同局の視聴率は48%増になっている。
FOXニュースに次ぐ、ケーブルニュース局2位は、リベラル寄りのMSNBCだ。視聴者数は247万人で、2019年には視聴率が34%も高くなっている。
トランプ大統領に「捏造記事」と非難されるニューヨーク・タイムズも好調だ(Getty Images)
トランプのおかげで儲かっているのはテレビだけではない。「トランプ大統領が繰り返し『捏造記事を連発している』と非難するニューヨーク・タイムズ(NYT)の株価は今年、30%以上も上昇している」ようだ。また「同紙の有料購読者数は2011年の約39万人から、2020年には約570万人以上に膨らんだ。この調子で行けば2025年には1000万人を突破するかもしれない」という。
570万人という数字はデジタル版のみの購読者であり、紙の購読者も加えると、その数は650万人になる。ウォールストリート・ジャーナル紙も2020年2月にデジタル版の購読者数は初めて200万人を超えたと発表している(紙と合わせると280万人を超える)。つまりトランプ就任とともに終わったという説もある大手新聞社の「トランプ・バブル」は、デジタル版が引っ張る形になっており、終わってなかったということだろう。
もちろん新型コロナで自宅にいたり、これまで以上に自由な時間ができた人が多くなり、さらにデジタル化がこれまでになく進んでいることも、こうした数字を後押ししているだろう。それにしてもトランプが就任してから、数字が上昇しているのは間違いない。
では、もし民主党のジョー・バイデンが大統領選で勝利したらどうなるのか。おそらく今ほどは多くの人が政治に興味を持たないのではないだろうか。トランプほどの「パンチ」がないからだ。
ジャーナリストというのは権力の監視が使命であり、基本的に権力などに対して懐疑的な生き物である。アメリカの大学でも、ジャーナリズムの授業で最初に教えられるのは「クリティカル・シンキング(批判的思考)」である。
トランプが注目を集める大統領選の行方を、メディア側も複雑な目で追っているはずだ。