お洒落で遊び心満載の新型マツダMX-30、初の女性主査による最強の挑戦

混沌のSUV界にあって、新しく斬新な印象を持つMX-3


というのも、マツダは営業を始めた100年前、実はクルマではなく、「ヘリテージ素材」と呼ぶコルクを初めて製造した。今回の室内でのコルクの採用は、その100周年に敬意を払う印の一つ。最初はコルクか? と思ったけど、実際に見たり触ったりすると、その明るさと丈夫さに気付く。

フローティングのセンターコンソールの周りにふんだんに採用されているコルクのおかげで室内の雰囲気は新鮮で明るい感じ。ドアのインナーハンドルに使われているコルクは、関係者によると「3万回こすっても大丈夫」だというから、マツダはコルク作りにかなり力を入れたようだ。

水平基調を強調したインパネは、ワイド感があり、開放的で気持ちがいい。面白いのは、シフトセレクターの変わったデザインだ。フローティング・コンソールに備わるバイワイヤ式のシフトセレクターは、逆L字レイアウトになっている。「D」から前に動かすと、「N」と「R」をそのままセレクトできるけど「P」に入れるにはセレクターを右にずらさなければ、パーキングは入らない。

その訳はというと、クルマを止めて降りるときに、「P」を確実に安全にセレクトしたことをドライバーに知らせたいらしい。普通のSUVだったら、余計なお世話だと思ってしまうけど、この遊び心満載のMX-30なら、その企画に合っているから許してしまうね。

運転席

もう一つの特徴は、観音開きドア。

2002年にRX-8で最初に採用されたフリースタイルのドアは、ユニークさ100点満点だけど、少し使いづらい。やはり、サイズ的には普通のドアの半分ぐらいの大きさなので、大柄の人間が後部席に乗るのは柔軟性が必要だ。身長189cmの僕が後部席に座ったら、ヘッドルームとレグルームはギリギリなので、180cmまでならなんとか乗れるだろう。

後部席の窓が小さいせいか少し圧迫感を感じるが、デザイン重視のこのMX-30についているからこそ、これもなんとなく許してしまう。

観音開きのドア

パワートレインは現時点でマイルドハイブリッド付きの2.0リッターのガソリンエンジンしかない。1月にEV仕様が追加される。マイルドハイブリッド仕様には24Vのベルト駆動スターター兼用の発電機「ISG」を組み合わせたシステムに6速ATが付き、156psと199Nmを発揮している。もちろん、爆発的な加速性がないことははっきり言えるけど、普通の街乗りには十分なパワーを提供する。

それよりも、重要なのはハンドリング。ラッキーなことに、マツダのエンジニアたちは、デザイナーほどは冒険していない。ステアリングは適度の手応えだし、路面からしっかりとフィードバックをとっているので、ドライバーに安心感を与えてくれる。乗り心地は多少固めだけど、このクルマの雰囲気に合っていて、コーナリング性能を高めてくれる。FF仕様や4WD仕様もあるけど、雪があまり降らない街乗りに使うなら、FFで十分だろう。

マツダはMX-30で随分と冒険した。そのシックな外観デザイン、スタイリッシュな室内、3つの新しい素材、観音開きドア、マイルドハイブリッド・エンジン、マツダらしいしっかりしたハンドリング、そしてFFが280万円から、4WDは310万円からという手ごろなプライスに、この100周年を祝って杯を上げたい。ドアが少し使いづらくても、思い切り楽しくて遊び心満載のSUVに乗りたければ、MX-30を検討してもいいかも。

国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
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文=ピーター ライオン

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