ウィズコロナの時計界動向 スマートウォッチやデザインコンシャスな新作まで

今年はスイスでのフェアもすべて中止と、時計界もこれまでにない状況に陥った。今年も新作は製作されているが、時代の変わり目となったのは確かである。


いまから約100年前に、いわゆるスペイン風邪が蔓延し、世界人口の約25%に相当する約5億人が感染したという。壊滅的と言っていいだろう。

それでも世界は立ち直った。世界経済の中心がロンドンからNYのウォール街に移ったこともあり、アメリカなどは1920年代に黄金期を迎えている。

時計界に目を移すと、1910年代から続くアール・デコ、そして19年にバウハウスが設立されるなど、デザイン的潮流の影響を受けたモデルが、いわゆる“スペイン後”に誕生している。現在、名作と呼ばれている腕時計には20年代、30年代にブレイクしたもの、製作されたものが結構あるのだ。

約100年後の今日、つまり“コロナ後”も、1900年代と同じように、きっと名作が生まれてくると信じたい。前回同様に、今回も2020年の新作モデルを時計ジャーナリストの評価とともに掲載する。

CREDOR Linealx (GCLH975)


Journalists’ Voices

並木浩一


国産屈指の高級腕時計ブランド「クレドール」の、デザインコンシャスなシリーズが「リネアルクス」。スタイリッシュさのルーツは、1985年に生まれた「リネアクルバ」だ。その誕生35周年を記念した品が印象的なブルー文字盤、スプリングドライブ搭載の限定モデルである。デザインテーマは、「悠久の宙そら」。星と流星の彫金をパワーリザーブ表示に施し、文字盤ベースには螺旋運動する銀河のダイナミズムを表現するスパイラルパターンを敷いた。シースルーバックから覗く、端正なムーブメントの眺めも必見。

篠田哲生


「クレドール」は、セイコーのデザイン力を発揮するブランドという印象。独特のエレガンスを表現しているので、他にはない魅力があります。このモデルは宇宙を表現しているとのことですが、時計の製造拠点である長野県塩尻は、確かに星空が美しい場所ですし、作り手の想いが詰まっていますね。スイス時計はブランドロゴに「GENEVA」とか入れますし、その場所の文化や環境がしっかりと反映されている。それがブランド力にもなっていますから、日本でも、もっと“地元感のあるデザイン”に挑戦すべきでしょうね。

本間恵子


時計愛好家はロマンティストが多いというが、そうした人々の心をくすぐる詩的なニューモデル。「悠久の宙(そら)」をテーマにしたというこの新作は、煌めく星々や、尾を引いて流れる彗星を文字盤のパワーリザーブ部分に彫金している。背面を見ると、シースルーのケースバックから露わになっているのは、渦を巻く銀河をイメージしたムーブメントの仕上げ。キラリと光る繊細な彫金、手間のかかった美しい仕上げはクレドールのお家芸ともいえるものであり、その両方が堪能できる、シンプルだが手の込んだデザインが見事だ。

ムーブメント|
スプリングドライブ 手巻き Cal.7R88
ケース素材|ステンレススチール
ケース径|39.3mm
価格|1200000円
問い合わせ|セイコーウオッチお客様相談室(0120-302-617)
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edit by Ryoji Fukutome

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 8月・9月合併号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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