本業以外を活性化させることがポイント。市場規模15兆円への「逆転シナリオ」を探る


「価値のズレ」に着目せよ


「1000平米の耕作放棄地を借りると、年額いくらかかると思いますか?」

こんな問いを投げかけたのが、SC鳥取の経営企画本部長、高島祐亮である。「野人」こと、元サッカー日本代表の岡野雅行が代表取締役GMを務めるJ3のガイナーレ鳥取を運営する。「数百万円?」という声が会場から聞かれたが、高島はこう笑った。「年額6000〜8000円なんです」。



「ホームタウンの米子には遊休農地が存在しています。一方、鳥取県は芝生の生産で全国2位です。クラブは芝生の管理はノウハウがある。そこで私たちが芝生を販売しよう、と。スタジアムを軸にした収益だけでなく、地域を軸にして収益をつくることにしました」

自治体など地元の人たちを巻き込む。その目指す先とは。

「うちのクラブの入場料関連の収入は10%未満です。Jリーグの場合、スタジアムから30キロ圏内の人口の1〜2%範囲が入場者数の割合と言われています。鳥取県に当てはめると、満員にはならないのです。だったら、満員にするのが経営のゴールとは言えません。最終的に『鳥取にガイナーレがあって良かった』と思えるところに落とし込めるかが重要だと思っています」

ホークスにしろ、ガイナーレにしろ、本業以外のところを活性化させたことがポイントだ。冒頭で紹介した岡部はこう言った。

「マンチェスター・ユナイテッドの経営陣がよく言っています。『我々のライバルはサッカークラブではない。ディズニーだ』と。IPビジネスにシフトしていくと思いますよ」
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text by Forbes JAPAN / photographs by Ko Sasaki

この記事は 「Forbes JAPAN No.076 2020年12月号(2020/10/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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