導入が進む医療IT、課題はサイバーセキュリティ

Photo by Lucas Uebel/Getty Images

ITは、現代の医療のかたちを全面的に変えてきた。遠隔医療から電子カルテまで、臨床医療にはイノベーションがあふれている。だが、あらゆる形態のITや、仮想・クラウドシステム上における情報の移動がそうであるように、そこには脆弱性が存在している。

日々の医療サービスにITを組み込む医療従事者が増加しているいま、これは考慮すべき重要な問題だ。米国の医療サービス大手「ユニバーサル・ヘルス・サービス(UHS)」は9月下旬、「ITセキュリティ・インシデント」により、「米国でのオペレーションに関連したITアプリケーションへのユーザーアクセス」を一時停止する事態に至ったことを明らかにした。

UHSは10月12日付けで、システム復旧の進捗状況を発表した。「外来施設およびすべての急性期ケア病院で、UHSのITネットワークが復旧し、電子医療記録(EMR)、ラボ、薬局を含むすべての主要システムおよびアプリケーションに接続できるようになったことを確認した。現時点では、データ復元がほぼ完了し、各病院は通常業務に戻りつつある。行動医療関連施設の大多数でWAN(広域通信網)が復旧し、残る施設もまもなく復旧する見込みだ」

だが、この問題は新しいものではない。新たなITを導入する医療システムが増加する一方で、こうしたシステムは、ずっと以前からセキュリティの問題に悩まされている。

患者のカルテには、膨大な量の個人情報や秘密情報が含まれることが多い。それを考えれば、医療サイバーセキュリティは重要な問題だ。サイバーセキュリティ業界も、この喫緊のニーズを理解しており、問題に対処するために急速な成長を遂げてきた。しかし、サイバーセキュリティは絶えず動き続けるレースだ。ITの急速な変化に伴って、脆弱性も変化する。そのため、この手の問題に対抗しようとする企業は、機敏性を維持しつつ常に研究を続け、セキュリティサービスを拡充し続けなければならない。

たしかに、ITは医療の様相を変えてきた。だが、医療ITと仮想プラットフォームへの依存が急速に増していけば、サイバーセキュリティの脅威も、拡大の一途をたどり続けるだろう。臨床医療でITを導入する医療システムが増えるいま、医療提供者、政府機関、規制関連の専門家は、患者の安全、データ保護、プライバシーのあらゆる面が確実に最重視されるように取り組む必要がある。

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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