ビジネス

2020.10.28

「オープンさ」が納得感を作る。世界とフェアに戦うための組織論|五常・アンド・カンパニー 慎 泰俊#3

五常・アンド・カンパニー 慎 泰俊


我々は、テクノロジー・データサイエンスの力でビジネスモデルを変革しようとしています。

例えばお客様のデータ集めに関しては、スマートフォンなどのデバイスを通じて家計簿をつけていただくなど、情報が自然に集まる仕組みを作ろうとしています。この情報を、データサイエンスの力で自動的に査定し、融資判断を行います。そして貸出・返済の工程ではキャッシュレス化を進めています。

これまで2019年9月末時点の顧客数は47万人、グループ全体の従業員数は2,700名を超え、多国展開のオペレーションを構築してきました。ここに、然るべきタイミングでテクノロジーを導入し、マイクロファイナンスのコスト構造を変革していきます。

そうすることで、「民間版の世界銀行」として、より便利で安価な金融アクセスを、世界中の途上国の方々に提供していきたいと思っています。

新しい世界を作るのは苦しい。そして楽しい


──途上国47万人もの「金融データ」からは、未開拓の大きなビジネスチャンスがさらに広がっていそうです。

アント・フィナンシャル(中国アリババグループの金融会社。Alipayなどを運用。)を見ていると、その動きは圧倒的です。彼らはデータを集めるためだけに1万人の社員を新規で採用したと言われています。

金融サービスを運用する中で生まれるお客様の「信用評価データ」は融資だけでなく、他サービスに転用できる大きな可能性を秘めています。例えば就職や買い物など、様々なサービスへの活用が考えられるでしょう。

このお客様の「信用評価データ」を活用した新しいプロダクトを使っていくことで、さらにお客様の生活を豊かにする。そしてそのプロダクトを通して得た収益をもとに、さらに金融サービスを安価にしてお客様に還元する。

そんな循環を生み出していきたいと思っています。

──では最後に、ベンチャーナビの読者である起業家予備軍、若手起業家の方々にメッセージをお願いいたします。

起業したての人は、恐らく今はすごく苦しくて大変だと思います。

私は起業して丸5年、無事に会社を潰さずにやってきましたが、今も辛く、苦しいです。たぶん5年後も辛くて苦しいんだろうなと思っています。

でも、恐らく何か新しいものを作るということは苦しいことで、そのプロセスも含めて楽しんで、自分が信じることや作りたい世界を作ることのために働くことが幸せなんじゃないかと思っています。

これからも一緒に頑張っていきましょう。


慎 泰俊◎1981年生まれ。朝鮮大学校法律科および早稲田大学ファイナンス研究科卒。モルガン・スタンレー・キャピタル、ユニゾン・キャピタルにおいて8年間にわたりPE投資実務に携わった後、2014年に五常・アンド・カンパニーを共同創業。全社経営、資金調達、投資等の全般に従事。金融機関で働くかたわら、2007にLiving in Peaceを設立(2017年に理事長退任)し、マイクロファイナンスの調査・支援、国内の社会的養護下の子どもの支援、国内難民支援を行っている。

連載:起業家たちの「頭の中」
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文=下平将人 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc.

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