米紙ワシントン・ポストによると、テッド・クルーズ(テキサス州選出)率いる上院共和党グループは、最高裁判事の増員、いわゆる「コート・パッキング」を阻むための2つの措置を提案する。
1つ目は、最高裁判事の増員を認めている憲法を改正し、その定員を現状の9に固定するというもの。ただ、改憲には下院と上院でそれぞれ3分の2、さらに全米の州のうち4分の3の承認が必要になる。
2つ目は、上院で最高裁の増員案は、3分の2の議員が同意しない限り審議しないようにするというもの。上院は現在は共和党が多数派を占めている。
コート・パッキングについては、米国民の間でも支持は広がっていない。ワシントン・ポストとABCが9月末に行った合同世論調査でも、支持した成人は全体の32%にとどまっている。一方で、ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の死去にともなう最高裁判事の空席について、大統領選が終わるまで埋めないようにすべきだと答えた人は過半数(57%)にのぼった。
共和党はトランプが指名した3人目の最高裁判事であるバレットについて、来月3日の大統領選前に駆け込みで承認しようとしている。バレットが就任すれば最高裁の構成は保守派6人・リベラル派3人となり、保守派の優位が確立する。
これに対して民主党は、2016年に当時のバラク・オバマ大統領がメリック・ガーランドを最高裁判事に指名した際、共和党は選挙が迫っていることを理由に承認を妨害したのに、今回はそれを強行しようとしているとその欺瞞を批判しつつ、承認に抵抗している。
民主党の大統領候補であるジョー・バイデン前副大統領は、以前はコート・パッキングを非難していたが、今回の選挙戦では明確な姿勢を示すのをためらっている。最近のタウンホールミーティングでは、コート・パッキングは「好きではない」としながらも、共和党側が「どれほどこれ(バレットの承認)を性急にやるか次第だ」と対応に含みを持たせている。
米最高裁判事の定員は過去に6回変更され、最も少ない時で5、最も多い時では10に増やされている。ただ、1937年のフランクリン・ルーズベルトを最後に、増員を試みた大統領はいない。