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和田彩花

華やかなステージでアイドルが弾けるような笑顔で歌って踊る。だが舞台を降りれば一人の人間だ。気になる人がいれば恋愛をしたいし、大人びたネイルもしたい。生理が訪れたら不機嫌になるときもある。しかしアイドルの世界で“理想の偶像”からはみ出ることは暗黙の規範のもと強く制限される。

2019年8月1日、和田彩花が自身の25歳の誕生日にブログで発表した「宣言」はひときわ注目を集めた。

「私の未来は私が決める 私は女であり、アイドルだ」

和田彩花、アイドルグループ・アンジュルムとHello! Projectの元リーダー。彼女はグループ卒業後もなお、“アイドル”であることを宣言した。さらに現代美術展や仏像のレビューやトーク、文芸誌への寄稿を行うなどアートの魅力を世に伝える発信を行いながら、生理ケアの知識や選択肢を発信するプロジェクト「#No Bag For Me」のメンバーとしても積極的に発言。そして表現の新たな可能性を探るライブ活動も行う。

10歳から足を踏み入れたアイドルの世界の違和感に気づかせ、従来のアイドル像を更新する彼女の思想のもとになったのが、アートだった。

「30 UNDER 30 JAPAN 2020」受賞者のひとりとして選出された彼女が、ジェンダーの問題の気づき、アートとの鮮烈な出会いを辿りながら思い描いた未来に迫る。



透明な爪ではなく、黒いネイルを塗りたかった


都内某所の撮影スタジオ。テーブルの向かいに座る和田が笑うと、取材現場全体が和やかになる。冒頭、「なぜアイドル卒業後もなお、アイドルを名乗るのか?」、率直に問いを投げかけると、彼女はきっぱりと答えた。

「誰かのためでなく、自分のためのアイドルがいていいと思ったんです」

その真意について、こう続ける。

「誰かのためのアイドル像はわかりやすいですよね。ファンの方々のために、元気や勇気を与える。でも私はこの関係性にずっと疑問を持っていました。アイドルが『与えて』、ファンが『求める』という構図が上下関係にみえてしまったんです。『与える』は言葉としても上から目線ですよね? 私はファンの方々と対等でありたい。ファンの方と一緒に生きて、自分が心地いいと感じる関係性で、アイドルでありたいんです」

彼女が強い疑問を抱いていたのは、これだけではない。アイドルの周囲を長らく取り巻いてきた社会構造に対してもだった。

「暴力的で分かりやすい差別だけではない。身近にも、不平等や性差別が存在すると気づきました」

写真=映美 文=田中一成 

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