「サンシャイン・ステート」と呼ばれるフロリダ州への移住は、パンデミックが全米を襲った2月と3月の以前から進行していた。新型コロナウイルスによる健康危機と金融危機による移住熱の高まりは、同州に利益をもたらす可能性がある。州の所得税がなく、人口密度が低く、ひらけた空間が多いフロリダ州であれば、ウイルスから逃れようと移り住む人々は、いろいろな意味で余裕をもって生活できるだろう。
ビッグアップルからビッグオレンジへ
フロリダ州は、ラテンアメリカ(とくにメキシコ)からの新規移住者に人気が高いだけでなく、米国の北西部や中西部、大西洋に面した中部諸州からの移住者も惹きつけている。なかでも注目すべきは、長年ビッグ・アップル(ニューヨーク市)に住んでいた人々が、「ビッグ・オレンジ」に大挙して引っ越してきていることだ。
ニューヨーカーたちは昔から、休暇滞在先の筆頭にフロリダを選んできたが、今では恒久的な移住先として検討している。あるリポートによると、州外への移住を望むニューヨーカーに一番人気の都市はフロリダ州マイアミで、同州のタンパとオーランドも上位に食い込んでいる。
リモートワークの普及により、物価が高く、寒い気候の大都市に住みつづける理由がなくなった今、広々とした庭、ビーチへの近さ、暖かい陽射しは抗しがたい魅力を放っているのだ。
BGIキャピタル(BGI Capital)でマネージングパートナーを務めるRobert Barthelmessによると、北東部や中西部からの移住を検討している実業家や投資家といった人々の多くは、住宅購入の準備をしている地域ですでにかなりの時間を過ごしており、年に1度かそれ以上の頻度で滞在している。そしてこれは、ラテンアメリカの投資家たちにも同じことがいえる。
「従来フロリダで休暇を過ごしてきた人々が、今ではサンシャイン・ステートに親しみを覚え、恒久的に移住するようになっている」と、Barthelmessは言う。
「これは重要な変化だ。フロリダが、年に1~2回訪れる旅行先から、心から自分の家と思える場所になったのだ。この傾向は、2017年の税制改革後に始まった。パンデミックと現在立案中の新税制は、(フロリダへの)移住をさらに後押ししている」