閉塞感漂う日本に活路はあるか? Chim↑Pomが見出した希望の形 #30UNDER30

Chim↑Pom エリイ、卯城竜太


「近代美術や仏像への造詣も深いし、発信していく力もありますよね。アカデミズムと芸能界、音楽とアートなど、ジャンルを超えた「和田彩花」という肩書に収まらない人間像を、新たな個人像のモデルとして追求しているように見えます。フランス留学でこれから知見も広がるだろうけど、とにかく和田さんがソロ活動するにあたって表明したステートメントが、すべてですよね。

『私の未来は私が決める』『私は女であり、アイドルだ』と。芸能界でずっと生きてきて、アイドルであることを引き受けて、これまでやってきたことを肯定しながら、フェミニズムを学んでそのあり方を更新しようとしている。めちゃめちゃユニークな唯一の個になるかどうかはこれから見てみないとわからないけど、彼女のような人が100人いれば社会が変わるかもしれないと感じさせます」(卯城)

歴然として存在する構造を受け入れながらも、それに安住することなく、自らを起点に世界を変えていく。そこには当然、さまざまな障壁が存在し、反発を受けることもある。Chim↑Pomがたどってきた15年余りの道のりもまた、衝突と反発の歴史であり、当事者との対話の歴史でもある。

いま、多くの若者は、批判を受けることそのものを恐れているようにも見える。波風を立てず、誰にも迷惑をかけないように。そんな日本のUNDER30が、活路を見いだすにはどうすればいいのだろうか。エリイはこう言い放つ。

「蔓延してる病気が滅びればいい。組織という集団性や匿名性もそれを助長してるよね。その優位の構造をミスリードして、気付かずに肩を持っちゃうこともある。でもその一方で『あやちょ(和田彩花)』のような希望もある」

卯城は、こう付け加えた。

「組織の論理になっちゃうんだろうね。価値観もチャンスも少ない上に、失敗したら自己責任だと叩かれる国だと。チャレンジする事が若さだとしたら、日本は国として若さを失っている。本当の大人って、若者が挑戦し、失敗した時に責任を取るべき存在のはずなんですけどね」

2021年10月には16年間に渡る活動の集大成となる回顧展(森美術館)を予定しているChim↑Pomだが、これからどんな世界にフォーカスし、作品づくりを行なっていくのだろうか。さしあたって今月予定されているエリイの出産が、何らかの作品として昇華されるのは間違いないだろう。けれども彼女は、最後まで私たちを煙に巻いた。

「アートはどんなに誰かが饒舌に語ったところで、その人が真髄をわかってるとは限らない。どんなにその周囲をめぐって、言語化しても、触れられるかどうかは話は別。そう、神さまみたいに」

写真=小田駿一 文=大矢幸世

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