スターリングは、ワシントン大学のダニエル・エルフェンバイン教授と共同執筆し経営学誌ストラテジー・サイエンスに発表した論文で、企業の採用プロセス自動化により、変革者となる候補者が締め出されていると論じた。
「異色な人材は1つのカテゴリーにぴったり当てはまらないため、見つけることがいっそう難しくなっている」とスターリング。例えばアドリブ力のあるコメディアンは、採用担当者から営業に適した人材とみなされる可能性が高いが、アルゴリズムはそうは考えない。
というのも、コンピューターモデルの大半は、特定の条件を使って候補者をふるいにかける一方で、それぞれの経験や特徴が企業の戦略にどのように合致するかを考えられないからだ。採用アルゴリズムは人間と違い、一つの選択が企業の直面する他の選択にどのように影響するかという「相互依存性」などの要素を考慮できない。例えば、コメディアンが会社の営業部門だけでなく、オフィスの雰囲気にもプラス効果をもたらすことに、アルゴリズムは気づけないのだ。
スターリングによると、問題はアルゴリズムが広い範囲の人材を吟味するものの、「最高のアスリート」を選ぶような基準で候補者をふるいにかけていることにある。将来的には、候補者を全体的な視点で評価できるモデルが登場するかもしれないが、現時点ではまだ不可能だ。
そこで求職者側に必要となるのが、自分をユニークな人材としてではなく、他の人々と同じグループの一員であるように見せることだ。以下に、そのための方法を紹介する。
男性的な言葉を使う
アマゾン・ドット・コムは、採用プロセス自動化に取り組んでいる。昨年には、候補者に1~5の星評価を与えるアルゴリズムを2014年から開発していることが報じられた。狙いは、採用活動を人の手が不要なものにすることだ。関係者は英ロイター通信に対し「誰もがこれを渇望している」と語った。「100通の履歴書を与えたらトップの5人が選出され、その5人を採用できるエンジンの実現が目的だ」
アマゾンは1年にわたる試験で、このアルゴリズムが男性的とされる動詞を使う履歴書を優遇することを発見した。同社は受領した履歴書を使ってツールを訓練していたため、その結果にも男性が優位なテクノロジー業界の構造が反映されていたのだ。「women’s(女性の)」という言葉を使っていた履歴書は減点され、「executed(実行した)」や「captured(捕らえた)」のような単語を使った履歴書は高い評価を受けた。