アーダーンNZ首相の総選挙での圧勝、「科学」はいかに貢献したか

Photo by Hannah Peters/Getty Images

世界中の政治指導者たちが、ニュージーランドで起きていることに注目している。科学はチョコレートのようなものだ。「本物」を適切に扱えば、私たちの協力者にもなってくれる。

先ごろ行われたニュージーランドの総選挙で、ジャシンダ・アーダーン首相率いる与党・労働党が圧勝したことに、科学は少なからぬ役割を果たした。アーダーンと政府は、主に新型コロナウイルスのパンデミックへの対応によって、世界的に高い評価を得ている。科学的な証拠に裏打ちされた措置を講じることでパンデミックに対応し、科学によって国民の目を開かせたのだ。

ニュージーランドがパンデミックに対応するために講じた措置と、それがパンデミックにどのような変化を起こしたかについてまとめた論文が先ごろ、ジャーナル「ランセット・パブリック・ヘルス」で発表された。

その論文に説明されているとおり、ニュージーランドは自国より先に感染が拡大し始めた中国やシンガポール、韓国など、東アジアと東南アジアの国々から多くを学んでいた。

その他の地域より早い時期に感染が拡大したこれらの地域は、「行動制限と身体的な距離(社会的距離)の確保、衛生習慣、感染者・接触者の集中的な追跡・管理といった措置を組み合わせる」ことにより、より長いリードタイムがあった米国や英国などよりも、感染拡大をよりよくコントロールすることができていた。

また、ニュージーランド政府は新型コロナウイルスについて、インフルエンザ(パンデミックを起こす種類のものを含め)と同じではないこと、そのため「明確に異なる戦略的アプローチが必要であること」を理解していた。

段階的に対応


ニュージーランドは今年2月28日に国内で初めて感染者が確認されるよりも前に、すでに国境を封鎖していた。実質的な転換点となったのは、同国が感染拡大の速度を緩めるだけの「(被害)緩和」から、「封じ込め」へと戦略を切り替える重要な決断をしたときだ。この場合の封じ込めとは、市中感染を止め、感染者をゼロに近づけていくことだ。

この戦略を採用した同国政府は、国内初の感染者が確認されてから25日目に、全域でのロックダウン(都市封鎖)と外出禁止を命じた。ただ、ロックダウンは一時的な措置であり、組み合わせて講じた複数の措置の一つだ。それぞれの措置は、いくつもの層からなるチョコレートケーキの一つの層のようなものだ。

論文によれば、ニュージーランドで新たに確認される感染者数は3月22日ごろにピークに達し、4月下旬から5月上旬にはゼロに近づいた。そして、5月中旬にほぼゼロとなった。

科学への態度が評価基準に


新型コロナウイルスのパンデミックは間違いなく、科学に基づいた政権運営を行わない政治指導者が誰なのかをあぶり出している。指導者が単に言葉だけで「新型コロナウイルスはそれをそれほどひどいものではない、そのうち消えてなくなる」などと主張し、科学に裏付けられた効果的な対応措置を取らなければ、ウイルスは感染を拡大させ続ける。

パンデミックは、各国の指導者のリーダーシップを試してきた。科学を進んで活用しようとしてきた人がいる一方で、科学を拒否、または抑えつけようとさえしてきたようにみえる人もいる──感染拡大をコントロールすることにおいて、より良い仕事をしてきたのは、どちらだろうか。

編集=木内涼子

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