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宇宙。それは子供や人類の夢であり、物理学や天文学などに携わる学者にとっては、どこまでも終わりの見えない探究の源だ。

宇宙産業への参入の動きは世界的に活発化傾向にあり、ビル・ゲイツやイーロン・マスクなど、世界の名だたるビリオネアたちも、宇宙に思いを馳せ、巨額の投資をしている。

一方、日本の宇宙業界はというと、非常に閉鎖的なのが現状だ。関係者たちはみな優秀で、その実力は海外から見ても引けを取らない。だが、「宇宙=特別な領域」というイメージが先行し、それが宇宙と私たちの世界を乖離させてしまっているようだ。

そんな中、宇宙産業を新たな政策の柱にしようと、人工衛星の打ち上げを目指す自治体がある。


「県民衛星」、2020年度中の打ち上げに期待


「福井県民衛星プロジェクト」は、福井県産業労働部産業技術課が取り組む超小型人工衛星の打ち上げ計画だ。

2015年に「福井経済新戦略」に織り込まれたプロジェクトの一つで、宇宙産業への県内企業の参入を促進するとともに、超小型人工衛星の打ち上げを目指す。

当初は2020年9月末までに打ち上げる予定だったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、打ち上げ予定場所だったカザフスタンのスケジュールの見通しが立たず、打ち上げを延期。だが、2020年度中の打ち上げに期待しているという。

県によると、県内企業が中心となって自治体と共同で人工衛星打ち上げを行うのは、全国初の取り組みだ。

1基300〜500億円、写真1枚30万円──厚く高い壁


しかし、そもそもなぜ福井県は、人工衛星を打ち上げようと考えたのか? 

全国的に知られる通り、福井県のこれまでの主な産業は「繊維」と「眼鏡」だった。とくに「眼鏡」は、眼鏡フレームの国内生産シェア96%を誇る。また10月上旬には、福井県鯖江市で製造された眼鏡フレームが、眼鏡業界の国際的アワード「シルモドール」で眼鏡フレーム部門グランプリを受賞するなど、日本のみならず世界的な地位を確立している。

だが近年、これらの産業は他国が主力となりつつある。そのため県全体として、新たな産業を生み出さなければと考えていた。

そこで出てきたのが「宇宙産業」だ。

口火を切ったのは、情報システム全般のソフトウェア開発などを行う県内企業「ネスティ」CEOであり、現在、福井県民衛星技術研究組合の理事長である進藤哲次氏だ。「福井経済新戦略」の5年ごとの改定の際、「繊維・眼鏡以外に何か目玉になる次の産業を」との県の呼びかけに、推進委員だった進藤氏が人工衛星事業を提案したのだ。

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実はそれ以前から、県内のIT企業が集まって「衛星データをビジネスに利用できないか」と検討してはいたという。しかし従来、人工衛星は大型のものがほとんどで、1基製造するだけで約300〜500億円もの費用がかかるのが一般的だ。しかも、衛星写真は10km四方のものを1枚撮るだけで、約30万円もの費用がかかる。これでは到底ビジネスにはならない。

文=長谷川 寧々 編集=石井 節子

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