プロデューサーの立場で、彼の読後感を高める
実は、小説を読んで映画化のオファーをして来るのは監督や脚本家ではなく、100%、プロデューサーだという。
「映画公開の際、メディアに登場するのは、監督や主役級の役者たちですが、実は、プロデューサーの意思と意見でこそ、映画は作られます」
そこで鬼塚氏は、相当の量の小説や漫画を読んでいるプロデューサーの読後感を高めるための工夫をする、という。
日本の小説は話が内省的な方向へ行きやすい。しかし、内省的な描写が長くなるほど話の進行は遅く、映像化しにくくなる。そこで、「『心の言葉』は重要なシーンだけにとどめ、風景描写や人物描写を増やし、読むだけで映像が脳裏に浮かぶような書き方をする」という。
「映像化を前提で書くと、プロデューサーからのオファーは不思議と増えてきます」
ビジネスでも「企画やプロジェクトが自分以外の人たちを巻き込んで進むことを想定し、彼らにとって進めやすいかどうか」を考え、そこから逆算して書くことを意識してはどうだろう。多くの人たちの参加を呼び込む、上長にも承認されやすい企画書や提案書が書けるかもしれない。
鬼塚忠◎アップルシード・エージェンシー代表取締役・作家・脚本家。1965年鹿児島生まれ。国立鹿児島大学卒業後、3年間、アジア、アフリカ、中近東、ヨーロッパなど40か国を放浪。海外の活字作品の版権売買を仲介する版権エージェント、「イングリッシュ・エージェンシー」を経て2001年、作家のエージェント、「アップルシード・エージェンシー」を設立。人気作家をかかえる。自身の著書も多数。劇団もしも主宰。