同社では「HVACシステム」(暖房・換気・乾燥・空調などを調整する機器の総称)の熱負荷を分析し、自律的に稼働させるAIソリューションを提供している。説明によれば、およそ3カ月で最大25%のエネルギー量、また20~40%の二酸化炭素排出量を削減しつつ、ビル運営者のHVAC関連の維持管理コストを50%削減するという。
BrainBox AIのCEOであるSam Ramadori氏は、冷暖房は商業用不動産が消費するエネルギーのおよそ45%を占め、既存のHVACシステムでは最適化する技術に限界があると指摘。世界中で商業用ビルなど不動産管理コストが高まり、環境問題への配慮も不可避となった現代社会において、「AIを使ったエネルギー節約」というアプローチを多くの運営者たちが受容していくべきだと主張している。
BrainBoxの自律AIビルソリューションは、2019年5月にリリースされて以来、世界各国で3万平方フィート(2787091m2)を超える商業ビルに設置されている。今後カナダや米国だけでなく、欧州とAPACなどでさらに事業を加速させていく計画だという。
なお、アームストロング・フルイド・テクノロジーという企業も、IBM のWatson IoTプラットフォームを活用し、建築物のエネルギー使用量および温室効果ガス排出量を削減するクラウドサービス「Pump Manager」を開発している。こちらは中国・鄭州大学の導入事例では、空調管理エネルギー使用量を78%、年間43303kgのCO2排出量、また運用コストを45499元分も削減することに成功したと報告されている。
米国グリーンビルディング協議会によれば、世界の温室効果ガス排出量の約39%、エネルギー消費の30%を建築分野が占めており、そのうち40%近くがHVACシステムを通じて消費・排出されているという。そう考えると、ビルやHVACシステムのエネルギー問題は、地球環境への影響を考えた際に率先して解決されるべき課題のひとつとなろう。
現在、不動産建築物の温室効果ガス対策は、あまりうまく進んでいないという資料もある。AIやIoTを活用した革新的なソリューションの登場・普及が一気に進んでいくことを期待したい。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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