ビジネス

2020.10.20

未来は若い人たちのもの。だからこそ「未来のデザイン」は若い人たちの仕事

山田邦雄 ロート製薬会長(左) 金森万里子 東京大学大学院(右)


金森:私の研究分野でも、やはり個人だけを見ていては、問題は解決しないと考えています。他人の気持ちを想像しなければ優しくなれないように、動物のことを知らなければ動物にも優しくできない。環境や生態系も同じで、環境や生態系のことをある程度知らないと守っていくことはできません。

新型コロナウイルスも同様ではないでしょうか。コロナは人にも動物にも共通した感染症。コロナをきっかけに、今後、野生動物に関する規制が強化され、人と動物の関係性が変わる可能性がありますが、単純に動物を「感染源となる恐れがあるから遠ざけておけ」といった具合に、ひとつの見方でとらえるべきではありません。

そもそも、人と動物の境界線は何か、両者はどう共生するべきかといった、少し深い視点から人と動物の関係性を問い直す必要があると考えています。「動物のWell-being」も、人や社会にとって大事です。

山田:人も動物も、細菌やウイルスなどの微生物と一緒に暮らしているし、みんなつながっている。動物への理解が進めば、感染症の理解や治療にも役立つはず。不衛生だからといって細菌やウイルスを取り除けばいいかというと、必ずしもそうではない。均一的で画一的なシステムは非常に危ない。人の組織や社会も同じでしょう。

日本企業は、どちらかというと同じタイプの人ばかりを集め、育ててきた。そのため、変化への対応力は弱い。個性の強い変わった人たちも共生できる多様性のある組織や社会が理想だ。

金森:受験勉強など教育制度がそうさせているのかもしれません。

当たり前をきちんとできる未来


山田:日本社会は、モデル化や標準化が好き。日本は、米国や中国には人口や経済の規模で太刀打ちできない段階だから、ユニークな構想や着想といった「個性」で勝負していかなければいけない。にもかかわらず、志やバリエーションでも負けている。中央と地方の関係を見てもそうだ。みんなで「同じ方向」ばかりを目指し、「同じ」ようになる。

金森:動物や自然に興味があり、詳しい人は、地方のほうが多いと感じます。研究で訪れているスウェーデンをはじめ、猟師やハンターなど普段から動物や自然と向き合って暮らしている人たちは、動物や自然と付き合っていくために必要なルールや心構えを代々受け継ぎ、その土地、その土地に合ったルールに沿って暮らしています。
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構成=池田正史 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 8月・9月合併号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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