米国の統合医療システム(病院・健康保険サービス)大手、カイザーパーマネンテの研究チームは先ごろ、社会政治的ストレスと急性心疾患の関連性について行った調査結果を発表した。
米科学アカデミー紀要に掲載された論文によれば、カイザーパーマネンテが南カリフォルニア地域の加入者およそ460万人に関するデータを分析したところ、投票日の翌日からの2日間に脳卒中、心臓発作、胸痛、不安定狭心症の診断を受け、入院した成人患者は94人。前週の同じ曜日の58人から大幅に増加していた。入院患者は性別や年齢、人種に関わらず同様に増えていたという。
過去の研究結果でも、地震やテロ攻撃、スポーツイベントといった大きな出来事の直後には、心臓発作や脳卒中のリスクが高まる恐れがあるとの見方が示されている。
たとえば、9.11米同時多発攻撃の後の2か月間には、ブルックリンある病院に心臓発作で入院した人の数が35%増加。また、この事件から3年間で、心血管疾患の発生率は53%上昇した。
感情は身体に影響
心臓発作などを引き起こすのは、大勢に同時に影響を及ぼす出来事だけではない。個人が日常生活のなかで経験するストレスも、心臓発作や脳卒中のリスクの増加に関連している。
米国では成人の大多数が現在、「政治情勢は大きなストレス要因だ」と捉えている。アメリカ心理学会が今年7月に発表した調査結果では、民主党支持者の77%、共和党支持者の62%がそのように回答した。
また、オンライン科学誌プロスワンには昨年、ストレスが個人にどれほど大きな打撃を及ぼし得るかについての研究結果が発表されている。たとえば、政治問題が原因で眠れない、倦怠感がある、うつ病になる、といった状態を報告している人は、5人に1人にのぼるという。また、11%以上が、「政治は(たとえわずかでも)身体的健康に悪影響を及ぼしている」と答えていた。