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2020.10.21

起業家・本田圭佑が大切にしてきた 3つの「キーワード」 #30UNDER30

本田圭佑



ブラジル1部ボタフォゴでプレイしている本田圭佑

本田には、起業家にとって大切だと信じているものがある。人としての深みと、優れたバランス感覚だ。

そのベースになるのは、「いろんなものを見てきた経験がどれだけあるか」。まず、世界を知ることもそのひとつ。

本田が24歳、FIFAワールドカップ南アフリカ大会に出場し、2ゴールを決めた直後のことだった。チームメンバーとともに南アフリカの孤児院を訪れたとき、親のいない子どもたちの様子を目にした。

そこで、彼らの多くがHIV感染症で命を落としたり、犯罪に手を染めたりするという現実を目の当たりにした。教育はもとより、夢や希望、善悪の意味すら学ぶ機会がない子どもたちの姿は、本田を強く突き動かした。

12年、「夢は人を大きくする。夢は人を強くする」というメッセージとともに子ども向けサッカースクールを創設した。16年には「KSK Angel Fund」を設立し、投資活動をスタート。グループ全体の事業規模は数十億円に膨らんだが、「それでも足りない」。自ら起業し、ベンチャー経営者になった。

本田が南アフリカで、貧困にあえぐ子どもたちの現実を知ったように、世界を知ることは、起業家にとって大切なことのひとつだ。

だが、それ以上に重要なのが、深い失敗経験やコンプレックスといった「痛い目を見てきたかどうか」だという。

「めちゃくちゃ抽象的に言うと、生き延びる力があるかどうかですね。起業家って、思った通りに事業が進まないことが日常茶飯事です。僕の場合はサッカー人生も同じで、思ったようにはなかなかいかないわけですよ。でも、失敗は成功よりも多くのことを学ばせてくれるんです。若い起業家を見ていても、こういう人たちのほうが強い」

そして、起業家にとって欠かせないのが仲間の存在だ。

「価値観もニーズも多様化していて、すごいスピードで物事が変化していくこの時代に、ひとりですべてをやり切るのは簡単なことじゃない。仲間って、めっちゃ大事です」

20年9月に中高生が月額1ドルで参加できるオンライン学校「NowDo」を立ち上げたのも、背景には「子どもたちが仲間を見つけられる場所をつくりたい」という強い思いがある。
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文=瀬戸久美子

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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