ビジネス

2020.10.19

世界を変える、一人ひとりの力を可視化

2020年7月、マクティア・マリコは上陸が制限されている世界遺産の福岡県宗像市の沖ノ島近海にいた。本土から約60kmも離れた沖でも浮遊プラスチックゴミが深刻な問題になっている。海を漂うプラスチックは長期間分解されず、地球上のさまざまな生き物や環境に長期の影響を及ぼす。年間200億本以上のペットボトルが出荷される日本の河川には数千万本ものペットボトルが漂い、海に流出している。

マクティアが代表を務めるSocial Innovation Japanの「mymizu」プロジェクトは、マイボトルを持ち歩く人が街中で給水所を探せるアプリを運営。公園や公共施設の水飲み場だけでなく、マイボトルに無償で水を入れてくれるレストランやカフェ、ホテル、美容院といった協力店も紹介。楽しみながら無駄なペットボトルを削減できるようにしている。

アプリは19年9月から現在までに世界で4万7000回ダウンロードされ、給水所の登録は世界で約20万件、日本の協力店は500以上ある。20年1月から節約できたボトルの数や二酸化炭素の量がわかる機能をアプリに追加。活動のインパクト量を可視化した。

英国育ちのマクティアは、2017年に共同創設者2人とSocial Innovation Japanを東京で設立。企業向けの研修や広報活動を通じて、自然環境保護を訴えてきた。当初は「日本でマイボトルは普及しない」と周囲に反対されたが、英国の若者の間に急速に広がるのを見て、「日本でもできるはず」と決心し、アプリ開発を始めた。

マクティア自身、「最初は自信がなくて、こんなことできないと思っていた」というが、仲間の支えを受けて経験を積み重ね、いまでは組織の代表として講演会に飛び回るほどに変身した。

「自分だけペットボトルやビニール袋を買わなくなっても何も変わらないと思うかもしれない。しかし、一人ひとりの行動を変えれば、世界は必ず変えられる。持続可能な社会を実現する仕掛けをつくっていきたい」


Mariko McTier◎1989年英国生まれ。ロンドン大学卒業後、中日新聞ロンドン支局を経て、駐日英国大使館の国際通商部でスタートアップ支援などを担当。2017年に一般社団法人 Social Innovation Japanを設立した。

文=成相通子 写真=帆足宗弘(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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