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World Restaurant Awards審査員

「長谷川栄雅 六本木」で提供するペアリング体験

「今度、長谷川栄雅行こうよ」そんな風に誘われたなら、ちょっと前の私なら、少し面食らうかもしれない。「長谷川」というからには人名なのだろう。最近そういえば、シェフの名前をそのまま冠したレストランがあったっけ……。

そんな想像がふくらむ「長谷川栄雅 六本木」とは、約350年前、1666年から酒造りを始めたヤヱガキ酒造が、「ものづくり」のこだわりを結集させて生み出した最高級ラインの日本酒「長谷川」と「栄雅」を購入できる唯一の直営店であり、トップシェフがプロデュースする酒の肴と共にその味を楽しむことができる場所でもある。そして、ヤヱガキ酒造初代の名前でもある。

場所は六本木、国立新美術館から程近い一等地。このほど、コロナ禍を受けて4月から一時休止していたその長谷川栄雅が再オープンした。



店ができたのは2018年12月、ヤヱガキ酒造 15代目社長の長谷川雄介氏が「日本酒を楽しむ文化を根付かせたい」と願ってのことだった。ヤヱガキ酒造はアメリカでも日本酒を造っているが、長谷川氏は、日本のみならず、アメリカでも若い世代のアルコール離れが顕著であることを懸念していた。

理由のひとつに価格があるとしても、日本酒は手作業が多いことで原価率も高く、過度な安売りはできない。では、「必需品」でなく「嗜好品」としての日本酒はどうだろうかと考えた時、祝い事で飲むイメージがあるシャンパンと同じように、日本酒を飲むことがカッコいいという文化を発信したいと思ったという。

しかし、日本酒造りのスタイルを変えるのかというと、そうではない。ヤヱガキ酒造は元々、米のうま味を生かした伝統的なスタイルの酒を造ってきた。米は特A地区の村の16の全農家から丸ごと買う。酵母は伝統的な協会9号が元となる蔵つき酵母だ。ただ、懐古主義ではなく、今の時代にあった、自分が今飲みたい日本酒を作っている。

3年前に、40年以上務めた杜氏が引退し、醸造学を学んだ新しい杜氏が醸造を行う。とはいえ、最近流行のバナナやリンゴのようなフルーティで甘い「香り酵母」を使った日本酒ともひと味違う。長谷川氏は「シャンパンの代わりに楽しめるようなスタイルのスパークリングやブランデー感覚の古酒など、『何かに似せた日本酒』ではなく、本来の日本酒らしさを追求したい」という。確かに、飲んでみると華やかさはありつつも、しっかりと米の味が感じられる造りだ。



「ワインの10年は日本酒の10カ月というくらい、日本酒はデリケートな味わい。管理もきちんとしてくれるかを確認した信頼できる店にしかおろさない」という長谷川氏。だからこそ、この最高級ライン「長谷川」「栄雅」を買えるのは、公式サイトかこの六本木の直営店のみだ。

文=仲山今日子

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