──FIST-AIDに賛同するバイク乗りに対するヤマハの狙いとは?
これまでバイクは「趣味」、「印象が良くない」と捉えられがちでした。また、バイク乗りの良くない印象の原因は、スピードや音(騒音)に起因していると思われます。しかし、自然災害などを中心に、困っている人たちを助ける存在になる大きなポテンシャルを秘めていると考えています。
例えば、車が入りにくい細い山道やオフロードのエリアでも、バイクで入ることで救援物資をいち早く届けることが可能になったりします。通常は趣味で乗っているような人たちでも、いざとなったら人助けのために誰よりも早く動くことができるのです。
今後はこの活動をバイクに加えて、モーターボートなどの水上の乗り物にも広げていきたいと考えています。
──ヤマハユーザー以外へのアプローチは?
企業としては、ヤマハが行なっている活動にはなりますが、我々の狙いは、ボーダレスで展開することです。言い換えると、ヤマハライダーに限定しないということです。むしろ、ヤマハユーザーだけに限定してしまっては我々の思いは実現しないと思います。
ライダーをヒーローにして社会貢献を達成するのであれば、他のブランドに乗っている人たちにも賛同してもらい、同じゴールに向かってアクションを起こしてもらうことの方が重要になり、それこそが本当のブランディングになると思っています。
実際に、今回のクラウドファンディングを支援してくれたユーザーからも「ヤマハ乗りではないですが、思いに強く賛同しますので応援します」といったコメントが多く寄せられています。社会課題を解決するというゴールを達成するためには、ヤマハに限定しない方がより効果的だと考えています。
ヤマハのwebサイトには「FIST-AID」のウェブマガジンも用意。
人を育ててブランドを作る
──ヤマハが考えるブランド構築とは?
我々はこれまで一貫して、ユーザーを育てる活動を通じてヤマハブランドを築き上げてきました。実はヤマハというブランドは日本国内だけではなく、海外でもとても多くのファンがいます。そして、かなりポジティブなイメージを持っていただいています。
その大きな理由の一つが、背景にある活動だと思っています。例えば、楽器の分野では、ヤマハ音楽教室があります。まずは音楽に触れる機会を増やし、ミュージシャンが増えることで最終的に楽器が売れるという仕組みです。また、モトクロス選手の養成プログラムを提供し、これにはヤマハのバイクに乗っていない人でも参加できるようにしています。
両方とも一見遠回りに見えるかもしれませんが、『体験を通じたブランド作り』をすることで強いブランドが構築されると考えています。