「面白くて変な渋谷」を再び。区公認ファッションECサイト仕掛け人の狙い

渋谷区公認ECサイト「SHIBUYA FAMILY SALE」仕掛け人の松井智則(左)と久保田夏彦


ECサイトというと、今シーズンの商品を扱ったり、来シーズンの予約販売が行われることもあるが、「SHIBUYA FAMILY SALE」に並ぶ商品は、シーズンを終え、店頭には並ばなくなった経年在庫と言われる品だ。そのため定価より安く商品を手に入れることができる。

参加店には、SHIPS、アーバンリサーチ、アダストリアなどの大手企業から、渋谷区内にのみ店舗をもつ単店のほか、渋谷区内に本社や販売店をもつブランドも名を連ねる。

大手企業がサイトに参加することで有名ブランドの商品が手頃に買える、と人が集まり、その流れで渋谷ならではの単店の商品も手にとってもらえるのでは、という狙いがある。また、大手企業はシーズンを終えた商品を出品できるため、在庫を余らせずに済む。サイト、ブランド、そしてサイトを利用する顧客で三方良しの関係を築くことができるモデルなのではないだろうか。

「このサイトの軸は2つあると思っていて、ひとつは経年在庫を余らせないこと。もうひとつはコロナで大変な時に、販路としてこれからも活用してもらえるようにすることです。第2波などを見据えて、もしまた状況が変わっても対応できるように、サステナブルなモデルを作っていきたいと思っています」と久保田は話す。


「SHIBUYA FAMILY SALE」の特徴を語る、渋谷未来デザインのプロジェクトデザイナー久保田夏彦

撮影から発送まで、出店は無料で


「SHIBUYA FAMILY SALE」ではサイトに出店する際に初期費用が一切かからない。商品をサイト運営側に送ると掲載用の写真撮影から発送まで、全て無料でサイト側が行い、売り上げの27%がサイト側に還元される。通常ECサイトに登録し、商品を出品するには最低でも100万円単位の初期投資が必要になるため、これは革新的な試みといえる。

さらにサイトの特徴として、プロのスタイリストによる全身コーディネートを見ることができる。ブランドの垣根を超えて、服の魅力が最大限に引き出された状態でオンラインショッピングを楽しむことができるのだ。


サイト上ではプロがスタイリングしたコーディネートが見られる(提供写真)

サイトの制作を行ったワンオーの松井は、「このスタイリングだといくら、とブランドを超えて売り出していきます。渋谷自体がダイバーシティの街なので、物として売るのでなくスタイルとして売っていきたい。スタイリストさんやタレントさんなどに協力して頂いて、いろいろなスタイリングを展開していきたいと思っています」と語る。

久保田は、スタイリングをした状態でサイトに掲載することは、このような時世においても「渋谷のカルチャー」を感じてもらえるような工夫になっているのではないかと話す。

「ファッションを見ながら渋谷を歩くのは楽しいけれど、コロナでできなくなってしまいました。スタイルを提案することで少しでも渋谷らしさを感じてもらえればと思っています。裏テーマとしては、コロナで撮影ができなくなってしまったスタイリストさんたちに活躍して頂ける場になればいいなとも思っています」


ブランドの垣根を超えたコーディネートがチェックできる(提供写真)
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文=河村優 編集=督あかり 写真=Christian Tartarello

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