なぜHIKAKINは「好きなことを仕事に」できたのか? #30UNDER30


「エンターテインメント界のトップを分析してみたら、大切なのは『言葉で自分を伝えること』かもしれないと気づいたんです。アーティストなら歌詞で、芸人さんならしゃべりで、自分の言葉を伝えてファンを獲得しているんじゃないかって。

ビートボックスは、好きな人は見てくれるけど、それだけやっていてもなかなかファンは広がらない。もっと言葉で自分を伝えないと、これ以上ファンは増えないと思った。だから、自分の言葉を発信するチャンネルをつくったんです。『あいつ変わったね』なんて言われながらも、やり続けました」

ビートボックスだけやっている時代には、いくらイベントを告知しても、ライブハウスなどの会場が客で埋まることはなかった。しかし「HikakinTV」を開設して自分自身がどういう人間かを伝えられるようになると、ライブ会場はすぐに満員になり、彼が本当に愛しているマニアックな曲を続けて披露しても、「ファンはちゃんと盛り上がってくれたし、ついてきてくれた」。

「ビートボックスとは少しだけ違うことをやろうと決めたことで、今僕は本当に好きなことができているし、しかも続けられています。一方で、僕は職人の世界も大好きですし、一直線なクリエイターも尊敬しています。これは人それぞれの選択だから、どちらが正しいというものではないです。皆さんが選べばいい」

無我夢中で始めたYouTubeで、 HIKAKINとして大ブレイクしてから今年でちょうど10年が経った。当初は「YouTuberってラクして食えていいよな」という声も耳に届いていた。そのたびに「じゃあやってみたらいいじゃん」と内心思いながら、必死で動画をアップし続けてきた。

「もし、ヒカキンさんが2020年に18歳だったとします。それでもYouTubeを選びますか?」と最後に聞いてみた。

「それは初めて聞かれた質問ですね。うーん……」と腕を組み、首を少し傾け、考えた上で彼はこんなことを言った。

「やっぱりやるでしょうね。ネットのエンタメの中心地がYouTubeだから」

中心の中の中心であり続ける気概──。そこにブレはないようだ。



HIKAKIN◎総登録者数トップクラスを誇る日本ユーチューバー界のパイオニア。高校生でYouTubeを始め、これまでに名だたる海外アーティストとのビートボックスによる共演を果たす。UUUMファウンダー最高顧問。

文=石戸 諭 写真=小田駿一 リタッチ=上住真司 編集=松崎美和子

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