──どうすれば自分より優秀な仲間を連れてくることができるのでしょうか?
「自分の無力さを心の底から確信すること」だと思います。言い換えると、自分1人で出来ることなんて本当にたかが知れていると心の底から思うことが私にとってはターニングポイントでした。
昔の私も含め、起業家にありがちなのが「4番バッターは俺、ピッチャー俺、監督も俺。そんなチームだけど来る?」といった態度で人を集めようとすること。これでは自分のファンはくるかもしれませんが、すごい人は集まってきません。
本当に恥ずかしいことですが、これまでは、心のどこかで「いざとなれば自分でなんとかする」と考えていた節がありました。ですが、これから展開する国のリストを作った際にその数が70カ国あって「これは絶対に自分1人じゃ無理だ」と確信したんです。
自分の無力さを確信すると、その必死さが人を口説くときの態度に出ます。優秀な人であればあるほど口説かれ慣れているので、小手先のテクニックは通用しません。起業家の本心を見抜いて、力を貸すかどうか判断すると思います。
──「自分が無力である」と素直に認められるにはどうすれば良いのでしょうか?
これは先ほどお話しした「自己肯定感」と関わるところで、自己肯定感が高い人は素直に自分の無力さを認められる傾向があるように思います。
どういうことかというと、自己肯定感が高い人は自分が無力だと悟っても「自分は生きていていい」と思える。自己肯定感というのは、自分が無能であっても自分の存在価値は薄れないと確信できることだからです。
逆に、自己肯定感が低い人は優秀な人たちに囲まれると自分の存在価値が無くなってしまうのではと不安になってしまうんです。それでは優秀な人が集まる組織は作れません。
自分の無力さを素直に認めることが、自分より優秀な人を仲間にする秘訣だと思っています。
慎 泰俊◎1981年生まれ。朝鮮大学校法律科および早稲田大学ファイナンス研究科卒。モルガン・スタンレー・キャピタル、ユニゾン・キャピタルにおいて8年間にわたりPE投資実務に携わった後、2014年に五常・アンド・カンパニーを共同創業。全社経営、資金調達、投資等の全般に従事。金融機関で働くかたわら、2007にLiving in Peaceを設立(2017年に理事長退任)し、マイクロファイナンスの調査・支援、国内の社会的養護下の子どもの支援、国内難民支援を行っている。
連載:起業家たちの「頭の中」
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