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2020.10.26

目指すのは世界規模の「機会の平等」。民間版の世界銀行を作る|五常・アンド・カンパニー 慎 泰俊#1

五常・アンド・カンパニー 慎 泰俊


──起業家の素養として挙げられた2つめの「諦めないこと」についてお聞かせください。

これは生存者バイアスがかかっているのかもしれませんが、うまくいっている起業家はみんな「諦めていない」んです。辛いことばかりある起業家人生ですが、それでも続けられるストレス耐性が必要ということだと思います。

私はこの「諦めない力」は慣れで身につけられるものだと思っています。階段のようなもので、いきなり3段跳びは出来なくとも1段1段のぼっていくことはできる。今の自分のキャパシティに対して相対的に少しずつ「+α」し続けることで、ストレス耐性は高まってくるのです。

もう少し別の例えをするなら、10キロしか走ったことがない人が40キロ走るのはとても辛いと感じるでしょうが、100キロ走ったことある人にとって40キロは大したことがありませんよね。

私も20年くらいずっと、常に自分のキャパシティに少しだけ「+α」した負荷をかけ続けてきました。つぶれてしまわない程度の負荷をかけ続けていると、体が慣れて自然とストレス耐性が強くなってくるものです。 

──なぜ常に自分に負荷をかけ続けることが出来たのでしょうか?

これは漠然とした話ですが、昔から歴史や人物伝が好きで、歴史的な偉業を成し遂げた人たちはみな人間としても立派な人たちばかりだなと感じていました。理想を語るにはそれだけの人格がいると、子供ながらに感じていたのです。

たとえば、革命家のチェ・ゲバラは「自分の心を芸術家のような気持ちで磨き続けてきた」という趣旨の言葉を残しています。コツコツと自分の心を鍛えていたのだなというのがすごくわかる言葉です。

なので、夢を語るに足る自分になるために、自然と自分に負荷をかけ続けてこられたのだと思います。

──起業家の素養として挙げられた3つめの「自分より優秀な仲間を連れて来られること」についてもお聞かせください。

創業初期のスタートアップが潰れても、特に誰も困ることはありません。世界は変わらず回り続ける。そんなスタートアップが生き残るためには、夢見ている世界を、どれだけ多くの人が「一緒に見たい」と思ってくれているかどうかだと思っています。

時折、人に憎まれてでものし上がろうとする起業家がいますが、会社の調子がいい時はそれで良くても、悪くなると一気に周りは離れていきます。

そうではなくて、良い時も悪い時も、一緒に成功を願い、協力してくれる仲間がいるかどうか。これがスタートアップが存続する必須条件なのではないかと考えています。
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文=下平将人 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc.

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