経済・社会

2020.10.16 07:30

ハリー王子とメーガン妃の「選挙介入」と周囲の反応

ハリー王子とメーガン妃(Photo by Chris Jackson/Getty Images)

米国の共和党議員が10月9日、ハリー王子とメーガン妃を非難した。米大統領選挙に介入して、ドナルド・トランプ大統領を不利にするよう働きかけているというのがその理由だ。

共和党のジェイソン・スミス下院議員(ミズーリ州選出)はツイッターで、「ハリー王子とメーガン妃は、米国外の称号を使ってトランプ大統領を不利にする運動を展開し、わが国の選挙に介入している」と投稿した。そして、駐米英大使に宛てた書簡の画像を添えたうえで、「英国政府に対して、そうした行動をやめさせるよう求めた」ことを明らかにした。

スミス議員の書簡では、ABCで放映された、米タイム誌が選ぶ「今年の100人」に関連する特別番組での夫妻の発言が引用されている。この番組のなかで、カリフォルニア州生まれで米国市民権を持つメーガン妃は、来たる大統領選挙を「われわれの人生でもっとも重要な選挙」と表現。ハリー王子は有権者に対して、「ヘイトスピーチや誤った情報、ネット上の負の要素を否定」してほしいと訴えたうえで、2人で共に、投票するよう呼びかけた。

ハリー王子とメーガン妃は2020年、王族としてのフルタイムでの公務から離脱し、カリフォルニア州に移住している。

スミス議員は書簡のなかで、夫妻の発言は「個人としての立場」のものだとする英国王室の声明に触れている。だが、夫妻が英国王室の一員として一部の称号と特権を維持している以上、個人的な発言と公式な発言を区別することはできず、したがって、政治的中立性に関する英国王室ルールの適用対象になるとスミス議員は主張している。

英国の一部のコメンテーターも、問題の発言は、民主党のジョー・バイデン大統領候補に対する支持と解釈できる点には同意している。

スミス議員は、英国王室がこうした発言を認めるのであれば、英国権威体制の最高レベルにおいて、米大統領選への「介入を容認する」ことになると主張。ハリー王子とメーガン妃が同様の発言を続けるなら、「すべての称号、肩書、特権を剥奪」するべきだと述べている。

この書簡には皮肉な色合いがある。というのも、民主党や米国の情報当局からは、ロシアがトランプ大統領を有利にするために2020年大統領選への介入を試みているとの懸念が出ているからだ。スミス議員その人も、2016年大統領選にロシアが介入したという点で、情報当局の見解が一致していることを認めている。ただし、トランプ大統領は以前から、そうした介入、とりわけ自分を利する介入があったことを全面的に否定している。

スミス議員の対立候補で、ソーシャルワーカーで依存症カウンセラーでもある民主党のキャシー・エリス(Kathy Ellis)は、スミスの書簡について「やれやれ、彼はまたこんなことをしていますよ、みなさん」とツイートした。「ミズーリ州第8選挙区の人たちが命を落としている。病院が閉鎖している。仕事がなくなっている。新型コロナウイルス感染症の患者が急増している。投票妨害がはびこっている。それなのに、(スミス議員は)こんなことを心配している。もはや驚きもない」

民主党のラジャ・クリシュナムルティ下院議員(イリノイ州選出)は、「この書簡によれば、選挙権の行使を促し、『ヘイトスピーチや誤った情報、ネット上の負の要素を否定』することは、(トランプ)大統領を不利にする運動にあたるということだろうか?」とツイート。「おそらくこれは、『ザ・クラウン』(エリザベス2世を描くNetflixドラマ)へのカメオ出演を狙った策なんだろう」と皮肉った。

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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