日本のジェンダーギャップはいつ埋まる? Waffleのふたりが目指す未来 #30UNDER30

Waffleの田中沙弥果と斎藤明日美

「30 UNDER 30 JAPAN 2020」の受賞者として選出された、一般社団法「Waffle」の田中沙弥果と斎藤明日美。

ジェンダーギャップ指数が、153カ国中121位という日本で、彼女たちが目指すのは「理系は男性の分野だという固定観念」を取り除き、ITやSTEM分野で活躍する女性を増やすことだ。

女性が当たり前に活躍する未来のために前進を続ける二人の原動力になっているのは、10代で感じた“違和感”だった──。



その日、徳島県の高校に通う松本杏奈は居心地の悪さを感じていた。高校生向けの情報学研究プログラムに参加したときのことだ。38人中、女子は2人だけ。STEM分野は大好きだが、「正直、コミュニティになじめなかった」。
 
プログラミングを心の底から楽しみたい。そう思って申し込んだのが、Waffle(ワッフル)が運営するWaffle Camp(ワッフル・キャンプ)だった。ウェブサイト開発のスキルとコーディングを学ぶ女子中高生向けのオンラインプログラムで、事前学習、インタラクティブな1日教室、2週間の事後学習にIT業界で活躍する女性たちとのトークセッションを組み合わせ、IT分野への進路選択も支援する。
 
最初こそ肩に力が入ったものの、インストラクターの女性から「自分のペースでいいよ」と言われて「気持ちが楽になった」(松本)。そして何より、STEM分野の第一線で働く女性たちに話を聞けたことがうれしかったという。

「周りの人たちから『女子が科学なんて無理』って言われたこともあったけれど、好きな分野を極めていく勇気と自信が湧きました。将来はヒューマンコンピュータインタラクションを学んで、遠隔コミュニケーションデバイスを開発したい」
 
それはまさに、Waffle CEOの田中沙弥果と共同創業者の斎藤明日美が求めていたストーリーだった。
 
Waffleは、IT分野のジェンダーギャップ是正を目指す一般社団法人である。活動の軸は3本。女子中高生向けイベントやプログラムの提供、親世代への啓発、そして政策提言だ。
 
世界経済フォーラムが公表した「Global Gender Gap Report 2020」によると、日本のジェンダーギャップ指数は153カ国中121位。この男女格差はITやSTEM分野にも当てはまる。OECD生徒の学習到達度調査(PISA2018)では、ICT関連の職業に就くことを期待していると答えた日本の女子高生の割合は3.4%と、63カ国中で最も低かった。
 
その要因として、田中は「日本には、理系は男性の分野だという固定観念が根強くある」ことを挙げる。こうしたステレオタイプを取り除き、ITやSTEM分野で活躍する女性を増やすことが、Waffleが掲げるビジョンだ。

「アメリカには『Girls Who Code』や『Black Girls Code』など、女の子だけでコードを書く場所を提供しているNPO法人がたくさんあります。今の日本に絶対必要なピースです」(斎藤)
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文=瀬戸久美子、写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN No.076 2020年12月号(2020/10/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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