起業か複業か。女性の働き方は今後どう変わるか?

左:松尾考哲氏 右:菅原智美氏


コネクションを広げたり、学びたいという意思でエメラルド倶楽部に入会する者もいるが、一番の動機は「仲間づくり」にあると菅原は言う。経営者は仕事をしていないときでも経営のことが気になるところが、友達と食事に行っても、どうしても家庭の話になりがちだ。女性経営者はそもそも数が少ないので、社会の中で孤立してしまいがちなのだという。

「それが女性経営者同士だと、わいわい楽しみつつ仕事の話もできる。女性は仲良くなると何でも話しますから、月末にお金が幾ら足りないなんていう話題も言い合ったりしていますね」と菅原は笑った。



副業と複業、「スラッシュ」というキャリアの形


少し前まで「ふくぎょう」と聞けば「副業」と書く人が多かったが、最近になって複数の仕事をもつことを意味する「複業」が取り上げられるようになってきている。コロナ禍において、絶対安心できる仕事というものが滅多に存在しないことを知ったいま、ひとつの仕事だけでなく「複業」をもつことがリスクヘッジとなるのだ。菅原もエメラルド倶楽部を主宰するだけでなく、複数の会社を経営している。

「落ち込む業態もあれば伸びる業態もある。それが複数あることで辻褄を合わせられるのです。私の場合、貸会議室のビジネスはピンチとなりましたが、別の物販業は伸びていたので、事業を1本に絞らないで良かったと思っています」

また最近では、ミレニアル世代がもつ価値観としての「スラッシュ」という言葉を耳にすることが増えてきた。

「スラッシュキャリア、あるいはスラッシュプロジェクトといった言い方があります。自分の会社の事業を発展させながら、さらにスラッシュして他企業と一緒に起業していくような足し算や掛け算ができると、ビジネスのスピードはもっと速くなる。大企業だと稟議申請に時間がかかります。でもベンチャー同士なら、やろうと思った瞬間に新たなものが生まれる。大きな可能性を秘めた新しいビジネスの形と言えるでしょう」



エメラルド倶楽部に登録する企業の8割ほどは、女性向けの商品やサービスだという。つまりターゲット層が同じなわけだから、会員同士が協業して互いの商品を売り合ったり、セミナーをコラボレーション開催して集客を2倍にしたりと、掛け合わせることで成果がより大きくなる可能性がある。そうした実例を出していくことで会員も増え、取り組みも盛んになるというプラスのスパイラルが進む。

男性経営者に多く見られる「市場がありそう」とか、「儲かりそうだから」というマーケティング発想とは違い、「自分が欲しい」あるいは「あったら幸せ」から始める感性重視型の女性経営者の方が、複業や協業を進めやすいというのは想像に難くない。
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text by Naoe Tamako(lefthands) / edit by Shigekazu Ohno(lefthands) photographs by Takao Ota

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