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マーケティング感性を磨いて時代を読む


「1.時代のうねりを読んでいる」から見ていくと、今、世の中の多くの人がLGBTの存在を知り、これまでは気が付かなかったLGBTを取り巻く問題に疑問を持ち始めているのです。

電通の調査によると、「LGBT」という言葉の浸透率は、2018年調査では68.5%となり、2015年調査の37.6%から30.9ポイントも上がっています。2012年、2015年の調査の当時は「LGBT」という言葉を知っている人自体が少ない時代でしたが、LGBTという言葉は近年急速に浸透しつつあることが分かります。

その一方で、実は日本では、まだまだ安心してカミングアウトしやすい環境をつくれていないということが問題点として明らかになっています。当事者の69.5%が「カミングアウトしやすい環境にはなってないと思う」、50.8%が「職場でのカミングアウトは抵抗がある」と答えているという結果も出ています。当事者以外の76.0%の人が「LGBTについて正しい理解をしたい」という意向を示しているというデータも出ています。

カミングアウトは当事者にとっては人生の重要なイベントで、カミングアウトをする人もいれば、しない人もいるものです。そしてもちろんそれは、部外者から推奨するものではありません。

しかし、当事者にとって「カミングアウトする/しない」を自分の意志で自由に「選択」できる、その選択肢がある環境こそが必要なのではないか、安全にカミングアウトできる環境をどうつくるのかはみんなで向き合うべき課題なのではないかということをみんなが思い始めている中で、ネットフリックスのキャンペーンはそのモヤモヤを言語化してくれたものだったのです。

一貫性とヒアリングから生まれる「納得感」


「2. 企業活動とメッセージの一貫性」は、なぜその企業がこのメッセージを出すのかといった、その企業だからこその説得力です。

このキャンペーンでは、ネットフリックスオリジナルシリーズである「FOLLOWERS」「クィア・アイ」「クィア・アイ in Japan!」「セックス・エデュケーション」「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」「ストレンジャー・シングス 未知の世界」「ル・ポールのドラァグ・レース」といった7つの作品がフィーチャーされました。

ネットフリックスには、LGBTをはじめとした多様性を描くコンテンツが多数扱われてきました。だからこそ、多くの人から「ネットフリックスがこのメッセージをするのは納得ができる」と支持を集めることができたのではないでしょうか。企業のこれまでの活動がメッセージをするに値する一貫性があるかどうかというのは、重要なポイントです。

最後に、「3. インクルーシブなプランニングプロセス」です。この企画を手がけたクリエーティブチームの木下舞耶と矢部翔太は、「LGBTQ知見の高いチームでしたが、自分たちの常識を疑い、わからないところは当事者にヒアリングもしました」とコメントしています。

自社の商品や広告などのマーケティング戦略を考える行為は、自分以外の人のことを考えてプランニングすることになります。つまり、マーケティングは「このターゲットは〇〇だよね」というような無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)からは逃れられないものです。だからこそ、プランニングにおいて、多様な人の声を聴く機会を取り入れる「インクルーシブ」なマーケティングを実践する努力が必要なのです。

どんなに大きな企業でも、コミュニケーション施策をうまくつくっている企業は、プランニングのプロセスに多様な人の意見が反映される仕組みを取り入れています。それは大げさな取り組みではなく、ちょっとしたヒアリングでかまわないのです。丁寧に当事者の意見を聞くという姿勢が大切なのかもしれません。

文=阿佐見綾香

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