ビジネス

2020.10.19

なぜネットフリックスの広告コミュニケーションは外さないのか?

渋谷駅で10月11日まで展開されていたネットフリックスの広告


キャンペーンの展開場所として、ネットフリックスは、同性パートナーシップ条例が日本で初めて成立した渋谷区を選びました。

渋谷駅を中心に、虹色のプレイバーと、ネットフリックスの7つのオリジナル作品の中の『この日、観てほしいシーン』にフィーチャーしたグラフィック広告が展開されました。10月11日カミングアウトデー当日には、朝日新聞で30段の新聞広告も展開されました。



一人一人が違ってあたりまえと理解する方々が増えることで、カミングアウトを取り巻く不安や緊張、さらには、カミングアウトという形式すらなくなるかもしれない。そんな未来を思い描いて、「あたりまえのことを、あたりまえに言える時代へ。」というタグラインを掲げたのです。

10月11日はカミングアウトデー(National Coming Out Day)と呼ばれ、自身の性的指向や性自認をカミングアウトしたLGBTの人々を祝い、人々の認識向上を目指した記念日でした。1988年に米心理学者のRobert EichbergやロサンゼルスのLGBT活動家Jean O’Learyらによって制定されたもので、日本ではまだ当事者の間でもあまり認知されていませんが、世界中のLGBTコミュニティで祝典などが行われています。

反響のあるキャンペーンを生んだ3つのポイント


このネットフリックスのキャンペーンは複数のLGBT活動家や当事者、そしてアライ(LGBTを積極的に支援する人のこと)にシェアされ、メディアにも取り上げられました。たまたま目にした人からも、ネットフリックスの巨大広告でカミングアウトデーを知ったと話題にのぼり、ツイッターなどで「ネットフリックスの広告が素敵」「胸を打つ広告」といったような反響がありました。

さらに「#あたりまえのことをあたりまえに言える時代へ」というキャッチコピーは、ハッシュタグとしてキャンペーンとは関係のないLGBTコミュニティの話題(足立区への意見など)へも使われていきました。

LGBTだけでなく広い文脈で捉えられるコピーが、当事者もそうでない人からも自分事化され共感されていったと考えられます。

今回ネットフリックスのキャンペーンが世の中からの反響を得ることができた理由は3つあります。

1. 時代のうねりを読んでいる
2. 企業活動とメッセージの一貫性
3. インクルーシブなプランニングプロセス
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文=阿佐見綾香

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