新型ウイルスに感染し入院したドナルド・トランプ米大統領が退院後、混乱を招く強気のコメントを繰り返す中、ワクチンの開発状況や感染拡大抑制の現状について科学的な見解を示したゲイツのコメントは歓迎すべきものだ。
ゲイツは、現状については率直に「とても懸念している。死者が再び増加するという複数の予測データがある。とても厳しい秋になるだろう」と語った。
一方で、ワクチンの開発状況については楽観できる理由があるものの、流行を収束させて一定の日常を取り戻すためには、忍耐を持ち、科学や研究機関を信頼することが必要になると主張。大風呂敷を広げるトランプ大統領には批判的な立場を取り、大統領の態度は「新型コロナウイルスがそのうち消え去るような誤解を与える。これは、人々が今、最も持つべきではない考え方だ」と非難した。
ゲイツは、陽性と診断された高齢者の血中酸素濃度を維持する方法のひとつとして、トランプ大統領にも使用された米リジェネロンの抗体カクテルに期待を寄せている一方で、トランプがデキサメタゾンを服用したことについては疑念を抱いている。デキサメタゾンは、入院して酸素吸入を行った後に投与されるのが一般的だ。
「デキサメタゾンは後期に使用される治療薬だ。トランプ大統領がなぜ両方を投与されたのか、理解に苦しむ」とゲイツは語った。
ゲイツはさらに、科学を信頼することと、科学機関の政治利用をやめることの重要性を強調。トランプ政権が食品医薬品局(FDA)に介入し、ワクチンの臨床試験終了後に2カ月間の観察期間を置く指針を阻止しようとしたことは「異様」だと指摘し、「ホワイトハウスは、各企業が求めていることだと主張したが、それはあり得ない。独立した規制機関に対する政治介入など、極めて異常だ。FDAはプラズマ(血漿)治療の発表では失態をさらした」と語った。
ゲイツは、科学機関が最終的にはホワイトハウスの圧力に反抗してでもベストプラクティスを貫くことを確信している。
「ワクチンの発表に関して同じ過ちを冒すとは考えられない。実際、FDAはホワイトハウスに逆らって指針を更新した」
司会者のクーパーはゲイツに対し、米国民の間でトランプが認めるワクチンに対する懐疑的な見方が広まる中、コロナ危機を終わらせるために十分な規模のワクチン接種を実施できるのかという懸念について聞いた。ゲイツの答えは前向きなものだった。
「そのうちにデータが揃うだろう。誰もがすぐにワクチンを接種したいと思うわけではないだろうが、2〜3割が接種して効果が認められれば、人々は進んで接種を受けるようになるだろう。接種率は7割以上にする必要があるため、いずれは広く受け入れられるようにならなければいけない」