ビジネス

2020.10.14

多数決で寄付先を決定。新しい寄付のカタチ


──好みのジャンルを選ぶだけで、ポートフォリオを通じて寄付ができるプラットフォームSOLIOのサービス開始も検討中です。

寄付は難しいという前提のもと、簡単にできるようにするのがSOLIOで、皆で考えながら難しいまま面白くやっていこうというのが新しい贈与論だ。寄付先や寄付の方法にも、多様性があるほうが面白い。

──新しい贈与論やSOLIOを通じて、多様な寄付社会を作れると思いますか。

贈与を日常に取り戻すことについて、私は希望を持っている。日本は類まれな贈答文化を育んできた国だ。例えば、私たちは神社に行くとお賽銭をする。お賽銭は神社への寄付だ。バレンタインやクリスマスに贈り物をしたことも1度はあるだろう。私たちは普通に寄付や贈与をしてきたことを思い出してほしい。そして、これらの行為とNPOなどへの寄付を切り離して考える必要はない。

──寄付先選びといえば、エビデンスや理性に基づいて、最も効率の良い寄付先を選ぶ「効果的利他主義」の考え方が大切だとする人もいます。

効果的利他主義は、起業家や経済界と親和性が高い。だが、効果的利他主義は理想的な羅針盤を作り、インパクトを数値化し、それを基に世界を良くするという考え方だ。ソーシャルセクターに対してこの発想を持ち込むことは、世界が広がるどころか貧しくなるのではないかと、危機感を抱いている。

──日本でも、最近は寄付行為を公言する起業家や芸能人が増えてきました。

日本には、寄付について人に話すものではないという価値観があるが、徐々に変わってきたと感じる。だが個人的には、多額の寄付をする人に光を当てすぎるのはどうかと思う。著名な人が大きな額を寄付するのを見て、一般の人が「寄付は縁遠いものだ」と感じてしまいかねないのが怖い。それよりも、皆がさまざまな団体や企業を知り、話をしながら、多様な形で寄付している社会が理想だ。


桂 大介◎早稲田大学在学中の2006年にリブセンスを共同創業し、史上最年少で東証一部上場。現在は「新しい贈与論」や「SOLIO」を運営すると同時に、寄付を通じて多数の非営利団体や株式会社の支援を行う。

文=瀬戸久美子

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 8月・9月合併号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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