世界のロボットコンテストで入賞した高専生はなぜスタートアップを選ぶのか

農業スタートアップで活躍する高辻克海さん


大企業でも社内ベンチャーやスタートアップに投資する機関も創設され、新事業への理解度も高まっている。スタートアップでの経験は、今後大企業内でもより高く評価されるだろう。

日本型雇用の「3種の神器」、安定した暮らしをキーワードとする大企業での社会的成功という夢は、時代の流れとともに自己実現への夢へと変わりつつあると筆者は考える。



大企業は本当に安心なのか?


大企業の高専生への採用活動は積極的だ。親としても将来が不安定なスタートアップより大企業に入ってもらえれば安心するだろう。そこで大きな組織の1人として活動し、家庭を持ち、家を持ち、社内ベンチャーで自分の事業を実現することもとても有意義だ。

一方で、大きな組織の中では自分の力でどこまで世界をより良くできるのかというチャレンジはしにくい。ヒト・モノ・カネが大企業に比べて圧倒的に欠けているスタートアップで卒業したての高専生が過ごす時間は生涯の投資になる。これについて高辻は以下のように考える。

「スタートアップは何もないところからみんなで作り上げていく。若い時のほうがチャレンジしやすいですし、その経験をもって大企業に入ったほうが他と差別化できると考えました。またスタートアップは高専のロボットコンテストと似ています。ルールが設定されて実験の中で課題を見つけ、何もないところからみんなでゴールに向かって試作機をつくっていく。特にベンチャーは世の中にないものをつくるところにモチベーションを感じてます」

高辻のようなロールモデルが成功すれば、フォロワーが出現する可能性が高まる。



進路に悩むのなら…


しかし、誰もが高辻のように一歩を踏み出せるわけではない。「安定」と「自己実現」の間で揺れる学生に彼はこう投げかける。

「進路について迷うことはあると思いますが、迷ってる時点で興味をすでにもっているということ。信頼できるパートナーがいて自分が興味あるなら飛び込んでみると良いと思います。スタートアップは福利厚生や環境が充実する会社も増えてきています。若いうちにやらないで後悔するのはもったいないなと思います」
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文=齋藤潤一 写真= Yuta Nakayama

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