米仮想通貨「コインベース」が社内の政治議論を禁止した理由

CEOのブライアン・アームストロング(Photo by Steven Ferdman/Getty Images)

米国の仮想通貨(暗号資産)交換所大手の「コインベース(Coinbase)」CEOのブライアン・アームストロングは先月、「政治や社会運動について職場で話すことを禁止する」と発表し、このルールに従わない社員を対象に特別解雇手当を含む退職パッケージを提案した。

その結果、サンフランシスコ本拠の同社から、約60人の社員が退職パッケージを受け取って退職した。

アームストロングは10月8日、全社員の約5%に相当する60人が既に職場を去ったとアナウンスしたが、今後さらに退職者が増える可能性もある。

Wiredが伝えたところによると、コインベース社内では今年の夏から、企業の政治的スタンスを巡る論争が起きており、それは同社がBlack Lives Matter運動をサポートする声明を発表しなかったからだとされている。その結果、一部の社員らはオンライン上で抗議活動を行った模様だ。

アームストロングは先日の公式ブログで、企業が政治的問題に関与することが、社内の分断につながり、業務の妨げになると述べた。彼の発言は、シリコンバレー企業の反発を引き起こしたが、グーグルやフェイスブックも同社と同様な、社内の政治的議論を抑える取り組みを始動させていた。

先日実施されたJUST Capitalによる調査では、米国人の68%が企業のCEOが、事業と関わりのない社会的事柄について意見を表明すべきだと述べていた。しかし、11月の大統領選を前に、共和党と民主党の対立が激化する中で、多くの企業が政治的対立からどのように距離を置くかに苦慮している。

そんな中、そもそも革新的な理念から始まった仮想通貨業界は、それ特有の試練に直面しているとの見方もあがっている。10月2日、ブルームバーグは、コインベースの初期投資家の1人のアダム・ドレイパーの発言を紹介した。

ドレイパーは「仮想通貨は金融業界を革新するものだ」と指摘し、「そのビジョンを実現するためには、理想主義とアナキズムを脱却しなければならない」と述べていた。

編集=上田裕資

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