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最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介


2. ステークホルダー > 株主


通信大手ベライゾンのハンス・ベストベリCEOは臆せず言う。ベライゾンが意思決定をするうえで、優先順位は明確。まずは従業員、次に顧客、次に社会、そして最後が株主だと。

「ステークホルダー資本主義」はコロナ禍でも不変だ。従業員は14.5万人いるが、これまで解雇はゼロ。現場作業員には危険手当を引き上げ、感染した場合は26週間の有給傷病休暇を付与。顧客に対しては、料金が支払えなくても契約を終了させないことを公約。社会に対しては、国内すべての高校生にニューヨーク・タイムズ紙の購読を提供し、350の学校で子どもたちのインターネットアクセスとデバイス需要に対応している。

フォーブス史上初、顧客の保護から従業員向けの扶養家族緊急ケアの提供まで、目下重要な22の基準をもとにした「パンデミック対応企業ランキング」では1位を獲得した。

もちろん、利益率が高くテクノロジー主導のベライゾンのような企業は迅速な判断を下しやすい。しかし、利益率の低いウォルマート、ターゲットといった小売企業も、同ランキングの上位25社に入っている。ターゲットは、30万人を超える最前線スタッフの時給を2ドル引き上げた。有給傷病休暇を追加で付与し、感染症の症状があっても出勤しなければと従業員が思わずに済むようにした。

これらの対応について、従業員中心すぎるのではないかと思う向きもあるかもしれない。しかし、それこそ米国が求めていることなのだ。10万人以上の米国人を対象にしたフォーブスの「最も公正な米国企業100社ランキング」のアンケート調査の中に「良き企業市民(コーポレート・シチズン)をどのように定義するか」という質問がある。毎回、大多数がこう回答した。従業員の給与と待遇で判断する、と。

3. 今日の解決策 > 明日の解決策


パンデミックが襲来するなか、米国最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツを経営するレイ・ダリオは、あることに気付いた。学校閉鎖に伴うオンライン授業が、経済的に不利な家庭の子どもを完全に取りこぼすということを。

貧困家庭の多くは家庭内の人口密度が高く、個人の空間もなければ病気になる可能性も高い。そもそも22%の子どもが自宅にパソコンがないか、安定したネット接続がない。ダリオはコネチカット州に1億ドルの寄付を約束し、州も同額を出資することで同意した。これが呼び水となり、ビル・ゲイツやのマイケル・デル、同州の議会や教育分野のリーダーたちが協力し、6万台のフル装備されたパソコンを同州の低所得家庭の子どもに届けたのだ。


レイ・ダリオ

一部の有識者は、こうした属人性の高い慈善事業に否定的だ。ゆえに一部の富裕層がこのような社会的影響力をもつことを防ぐべく、高い税率を課すべきだと主張している。しかし高所得者に対するあまりにも高い課税率は、歳入を増やすより成長を抑制することになるだろう。

これは公共政策としてもお粗末だ。民主主義は構造的に、長期的な成果を苦手とする。一時的だが即効性のある施策に取り憑かれがちな政治家に、20年越しの投資を納得させるのは困難だろう。一方で慈善事業はリスクキャピタルとしての役割を果たす。政府なら取りにくいリスクも、慈善事業なら取ることができる。

翻訳=木村理恵 写真=マーティン・スコラー

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