希望が見えた衝撃の報告書「グレーター資本主義」とは

イラスト=ピエールルイージ・ロンゴ 

米「Forbes」2020年6・7月号掲載の「米国経済最新リポート」。いま必要なのは、これまでの資本主義システムそのものに対する解決策だ。


わずか数週間。この世界は、第二次世界大戦以来の未曾有のスピードで変貌を遂げた。私たちの働き方や学び方、ビジネスの仕方は、劇的かつ恒久的な転換点を迎えたのだ。そして最大の変化は、私たちの経済システムそのものに起きている。
 
資本主義は人類が生み出した最大の繁栄エンジンだが、パンデミック以前からすでにひずみは生じていた。10年におよぶ堂々たる経済成長と雇用創出の実績にもかかわらず、多くの米国人は「資本主義のシステムは不正に操作されている」「ルールを守り一生懸命働いても、もはや成功は約束されていないと感じる」と答えていた。国全体の失業率は最低を記録していたのに、だ。

この傾向は特に若い世代で顕著であり、コロナ禍でさらに促進された。ビフォーコロナ時代の最終週となった2月末、フォーブスは30歳未満の米国人1000人を対象に、資本主義と社会主義のどちらを支持するかという調査を行っていた。資本主義を選んだのは50%、社会主義は43%だった。

10週間後、8万人の死と2000万件の失業保険給付申請を経た米国で、我々は同じ調査を行った。結果は逆転した。47%が社会主義に、46%が資本主義に賛同したのだ。この変化は世論に反映されている。最低所得保障や家賃免除、雇用保障といった概念が、急速に米国政治の議論の中心に躍り出てきたのだ。

さらに注目すべきは「神の見えざる手」の作用だ。資本主義の守護神として、経済学者ヨーゼフ・シュンペーターならこう言うだろう。新しいシステムの創造には、古いシステムの破壊が必要だ、と。

例えば経済学者ミルトン・フリードマンが残した「株主第一主義」というレガシーは、(すでに崩壊寸前ではあったが)新型コロナウイルスの犠牲者に数えられるべきだ。以前は「単純労働者」と呼ばれていた食料品店や運送業者で働く英雄たちが、コロナ禍のなかで「エッセンシャル(必要不可欠)」と呼ばれるようになったことがとどめを刺した。彼らを可能な限り低賃金で雇い、それによって株主への四半期配当金を守ろうとするCEOにとっては残念なことだが。

前回の金融危機で用いられた「Too Big To Fail(大きすぎて潰せない)」という救済方針もまた、時代遅れであることが証明されつつある。クラウドファンディングから暗号通貨まで、経済活動は2010年代に間違いなくボトムアップ型に寄った。このような救済のあり方は、前回よりはるかに強い批判を浴びている。

時代は、これまで存在してきたシステムより優れた、システムそのものに対する解決策を求めている。すなわち、「グレーター資本主義(Greater Capitalism)」だ。

この「グレーター資本主義」は株主だけでなく、すべての観点における利益を評価基準とする。ここ数年で浸透してきた「ステークホルダー資本主義」を多分に取り入れたものではあるが、そのルーツは大企業ではなく、機会と競争環境の平等をなによりも求めてきたスモールビジネスや起業家にある。「グレーター資本主義」が正しく実践されれば、賢明かつ長期的な行動が広がりを見せ、それによって恒久的な解決策が生み出されるだろう。

ここに、3つの式を提示したい。いずれもこの数週間で明らかになってきた、「グレーター資本主義」のヒントとなる概念だ。
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翻訳=木村理恵 写真=マーティン・スコラー

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 8月・9月合併号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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