ビジネス

2020.10.17

深刻化するファッション業界のごみ問題 なぜ「デザインの見直し」が必要か

旧型のファッション業界体系が環境に与える影響は大きい(Photo by Unsplash)

現在のファッション業界最大のトレンドと言えば、衣類の生産量の増加、着用期間の短縮、大量のごみ問題、国際輸送と国際飛行を合わせたよりも多量の温室効果ガスの排出量など、目をそむけたくなるニュースばかりです。

2019年までの15年間で、業界の生産量は倍増したものの、捨てるまでに洋服を着る回数は40%近くも減少しています。廃棄された洋服の73%が焼却または埋め立て地で処分されています。約12%がリサイクル用に回収されますが、それも切断されてマットレスの中身(詰め物)に使用されるか、断熱材や掃除用のクロスになることがほとんどです。回収されて、新しい洋服として生まれ変わるものは、1%にも満たないのが実情です。

こうした傾向は環境を破壊するだけでなく、ファッション業界が長期的に成功をおさめる機会を奪うことにもなるのです。洋服の利用率が下がり、リサイクル率も非常に低いことで、業界の損失は5600億ドルにも上ると見られています。

経済的に低迷しているだけでなく、ファッション業界には政策立案者からの厳しい目が向けられています。イギリスを例に挙げると、2019年2月、国会議員からアパレル業界に対する拡大生産者責任が提案されました。これは、顧客が洋服を廃棄する際、処理費用をブランドが負担できるように課税条件を設けるというものです。消費者からの変化を求める声も高まっています。毛皮業界を変え、アパレル工場の労働者の権利向上のきっかけとなった時と同じように、消費者は、プラスチックのマイクロファイバー、大量のごみ問題、温室効果ガスなどの問題に対する真剣な取り組みを企業に求めています。

循環型モデルへの移行を


ファッション業界が今後も繁栄するには、抜本的な見直しが必要であることが明らかになってきました。循環型経済の原則を導入することは、現在の産業の特徴でもある「資源の投入、生産、廃棄(take-make-waste)」モデルから移行する機会にもなります。こうしたアプローチは、衣類の着用率、安全かつ再生可能な素材を原料とする衣類、そして古着を再利用した新しい洋服の数を増やすためのビジネスモデルを実現するものです。

こうした枠組みを取り入れることで、ファッション業界は、より良い結果を招こうとする努力が経済的必要性と相反する「ゼロサムゲーム」からの脱却を図ることができます。代替策として、ごみをコントロールし、素材を使い続けて自然なシステムを再生することで、今までにない方法で顧客のニーズを満たし、環境にも配慮しながら、新しい成長分野を生み出すことができるのです。
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文=Francois Souchet, Make Fashion Circular Lead, Ellen MacArthur Foundation

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