──今回、こだわりにこだわった、これまで見たことのない写真集を作っていただきました。
クラウドファンディングで共感してくれた支援者向けの、限定500部だからこそできることを考えました。人の想像を超えるサプライズ感を大事にし、身近にないマテリアルを使い、写真集としては全く新しい表現を盛り込みました。
僕の「収集癖」の現れなのかもしれません。ホビーの延長線上で、自分自身が「こういうものがあったらいいな」と思う異常なまでのこだわりを形にしました。
僕の収集癖は、結局は「レア感」に帰結します。まだ見つかっていない宝を見つけるぞ、とマニアックなものを探して、集めてきました。「なんだこの、超マニアックな写真集は」と、非日常的なレア感を味わえるプロダクトになったかと思います。
表紙は職人が1枚1枚銀箔を破り、手作業で剥がすという作業を入れることで、一冊ごとに違った形で写真集のタイトルと説明文が現れてくる仕様にしました。
本の背の部分がスケルトンになっていて、その上に銀箔を貼り、樹皮のようなニュアンスを出しました。経年劣化も含めて長く楽しんでもらえる写真集になったかと思います。
表紙で銀箔を「破る」という手法を使った理由は「手の痕跡」を大事にしているからです。エディション500冊で採算度外視、支援者一人ひとりに思いを届けたいという写真家のハートを表現しました。自宅に届いた箱を開けて、見たことのないような写真集にびっくりするという、「質量」を伴ったリアルな経験は、VRではできないことですよね。
実はこの写真集には最新のテクノロジーが詰まっています。例えば題字は紫外線(Ultra Violet)を照射し、瞬間的に硬化させるUV印刷を使っています。
写真集って、アナログで原始的な表現と言えるかもしれませんが、本作品は未来のテクノロジーを持って、過去に戻って行っているという感覚があります。昔の人に見せたら「こんなことができるのか」とびっくりされると思います。テクノロジーの力で、実はアナログの表現も広がっているんですよね。
結局は、これだけデジタル化された時代だからこそ、人々の所有欲を満たすようなものを作れるかどうかだと思うんです。データではなく、質量のあるものを生み出すならば、中途半端なものだと作る意味がない。
グーグルで検索しても出てこない、この世にまだないものを生み出したい。そういうものがやっと今、アウトプットとして出せるようになってきたように感じています。