梁啓超はまた、英国の陸軍総司令官、ウルズリの言を引き、「中国はフランケンシュタインのような怪物で、大の字で寝ているときは安逸無為だが、いったん目を覚ますと牙をむき爪を研ぐ」と指摘していた。
さて、今年はどことなく1980年に既視感を覚える。当時、米国はインフレと不況に悩まされ、人種差別や麻薬使用の著増などに直面、超大国としての威信も大きく揺らいでいた。そして大統領選挙を迎えた。日本は、第2次石油危機への対応に腐心し、自民党の派閥抗争が混迷を極めるなか、大平正芳総理が急逝して総選挙となった。米国が断トツの経済大国で、GDP世界シェアは24%、日本が第2位で9%だった。中国は3%にも満たず、およそグローバル・プレイヤーではなかった。
あれからちょうど40年、日米はコロナ禍の対応に追われながら国のカタチに戸惑い、大きな政局を迎えている。他方で、中国は眠りから目を覚まし、驚異的な成長を遂げるとともに、コロナ問題からもいち早く脱した感がある。今やGDPの世界シェアは14%で第二位、日本との差を広げる一方である。
こんな中国だが、最近では、米国のみならず多くの国々との関係が微妙になっている。拡大主義と自国第一主義の印象が強いからだ。先進国からは先進技術や情報流出、中国の政治的価値観への反感が高まっている。さらに、中国基準を世界標準にしようとの「中国標準2035」に対する警戒感が強い。
日本の中国への思いも複雑だ。中国の対日ムードはとみに改善しているし、インバウンドで訪れていた毎年1000万人近い中国人旅行者は、日本の観光業にとっての上客だった。それでも、いまだに日本人の85%が、中国によくない感情を抱いている。
経済を見ると、中国への依存度は非常に高い。日本の貿易の4分の1が対中国である。日本企業は中国国内に3万3000の拠点を持ち、世界拠点の4割を占める。進出企業数も約1万4000社に上っている。加えて、中国は、今後、生産基地としてよりも、消費市場として有望である。年収1000万円以上の階層が2億人を超え、巨大なマーケットになっているのだ。中国がくしゃみをすれば、日本は風邪をひいてしまうのである。
このように、外交面が難儀で国民感情もしっくりいかない、でも食べていくには不可欠だ、という相手にどう向き合っていけばよいのか。はやりの言葉でいえばnarrow corridor(狭い回廊)だが、私は大きく4つのゾーンで検討していけばよいのではないか、と考えている。