カマラ・ハリスのインド系ルーツと、知られざる「血の一滴」の法則

カマラ・ハリス上院議員(Getty Images)


さらに見方を変えるとそれは、その血が入っているから黒人でしかないという、“与えられた”画一的な分類に対する、当事者からの抵抗とも捉えられる。人間は誰ひとり同じでないように、アメリカ人もそれぞれに異なる。たとえばハリスの場合、自分はアメリカ人であり、黒人であり、さらにアジア人であると主張できる権利を彼女が行使した、というわけだ。

そこで問題となるのが、ハリスを始めとする多人種のミックスとなる人たちを取り巻く環境、そしてアメリカ社会がどう対応するかである。いや、本人が言ったところで、何も変わることはない。黒人は黒人、と従来どおりひとつの枠に押し込めようとするのか。

あるいは、その人物が人生を歩んでいく上で自らの在り様をリスペクトし、自らの言葉で表すアイデンティティを受け入れていくのか。それは、ますます多様化される社会のなかで生きていく、われわれに課せられた命題とも言えるだろう。



新元良一◎1984年に米ニューヨークに渡り、22年間暮らす。その後帰国、京都造形芸術大で専任教員を務めるが、2016年末に再び活動拠点をニューヨークに移し、現在は米国から『WIRED』日本版SZ MEMBERSHIPにて「『ニューヨーカー』を読む」を連載中のほか、President Onlineにも寄稿、旺盛な表現活動を行う。主な著作に『あの空を探して』(文藝春秋)。ブルックリン在住。

文=新元良一 編集=石井節子

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